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わたしは自分がなにを感じ―なにを考え-ているかを書いてみたいと思う(キケロ)
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階段を上った先は、少し大きな広場になっていた。

そこは、一種の王者の間だったのであろう。
わらを編んで作られた玉座に、険しい表情で警戒心も露な少女が座っていた。
彼女は風変わりな頭飾りをつけ、小さな骨とビーズ玉で出来たネックレスをいくつも首に巻いている。
そのすぐ横では、数名の女戦士が大きな団扇で彼女を扇いでいた。
そして、大きな気味の悪い仮面をつけた別の女が、彼女の右後ろから此方をじっと見つめていた。

「私はアマズールの女王! 我等の聖地に来たのは誰だ? 石を取りに来たのか?」

はいそうです、と誰が答えるものか。
石を取りに来たと言えば、こやつらは一斉に取り押さえるであろう。
仕方がない。

「そうか。ならば貢ぎ物を私の前に置け!」




このアマ、いい根性してやがる!

一瞬俺が気色ばんだのをみて、テレジアとフランソワが前に出て、これまでに拾ってきた武器を差し出した。

「これは、我が国最強の弓でございます」

…アラム城で拾って以来、「これいらないけど一応持ってくか」と合切袋の中でスペースをとっていた、いらないものだった。

それを受け取るなり、女王は後ろを振り向いて仮面の女に囁いた。

「言ったとおりだろ? 根性無しだってわかってたのさ!」



その根性叩き直してや…

俺が思わず武器を取りそうになったのをテレジアが力尽くで止めている間にフランソワが前に出て、何やら口上を述べている。
あー、あいつは女の扱いだけは得意みたいだからな。

「わたしはアマズールの女王!
わらわはマウムームーの寺院を治めておる」

「アマズールとは?」

フランソワの問いに、女王は誇らしげな表情を浮かべる。

「我等は寺院の守護者!
我等マウムームーの寺院を護る!」

寺院はどうやらマウムームーを祭っているものらしい。
それもこの広間の裏に存在しているようだ。

「マウムームーは岩の守護者!炎の道を行け!
炎の池の中に住まわれておる!」

そのやり取り後だった。
気味の悪い仮面の少女が近づいてきて囁いた。

「シーッ! 取引しない?
私はクワリクボナ。マウムームーの司祭よ。
私達この寺院に住んでるの」

意外にも友好的な少女を前にし多少戸惑ったが、その色気たっぷりの格好はたまらなかった。
先程のアマズールの女王とは大違いだ。

「マウムームーとはなんだ?」

「シーッ! マウムームーに聞こえてしまうわ! 
マウムームーは炎の池に住んでるの!」

「取引? 何をするんだ?」

「私はあなたの味方よ。役に立つものを持っているわ!」

「そうか。ところで、コズミック・フォージというのは?」

「それは何のこと? 知らないわ」

「あの女王は一体なんだ?」

「女王は下着を着けてないの!」

「なんだって!?」

俺はおろか、フランソワまでも先程の女王のいた方を見つめてしまった。

「シーッ! 後ろにいるわよ!
ともかく取引しない?」

この女の意図が分かりかねたため、俺は思わず「マインドリード」でこの女の心を覗いた。


―素敵

「君も素敵だよ」

咄嗟にそんな言葉を言ってしまった。

すると、クワリ・クボナは仮面をそっと取った。
下から現れたのは、どぎつい化粧をしているかかなりの美しい顔だった。
目はいたずらっぽく―そして挑発的な輝きを放っていた。

いける!
女っ気が無く、ひたすら泥と岩の中をウロウロしていたんだ。
たまにはこういう事も無くてはな。

「ねえ…一緒に燃えてみない?」


何!!

この女! 俺を誘うとはいい度胸をしている。

後ろから、冷たい、軽蔑しきったような視線が二つほど刺さってくるがそんな事を気にする俺ではない。

「無論だ」

「ならば証を立てて」

「証?」

「そう!炎の道を歩いて!それが証よ」



…どうやら、マウムームーに会って来ないとダメらしい。
ふん。
ならばさっさと倒してやろうではないか。

「いいだろう。歩いていこうではないか」

そこでクワリ・クボナが売ってくれている足の粉を買う事にした。
代わりに彼女が欲しそうにしていたマウムームー像を与えた。
後はさっさとマウムームーに会って…
ふ。
ひさびさに楽しい夜が過ごせそうだ。

「熱くなってるやつには気を付けて」

「ふ…待っておれよ」

俺だけでなく、この女も嬉しそうに―熱い夜を楽しみにしているようだ。

ならばさっさと終わらせよう。

奥に進んでみると、前方には煙を噴き上げる噴火口が待ち受けていた。
熱い石炭の層が火山の淵まで端のように続いており、ピラミッドから反対側へ渡る唯一の道となっていた。

先ほど購入した足の粉というものを革の靴の裏へ丹念に振りかけて塗ってみた。
そして半信半疑、恐る恐る石炭の道へ足を踏み入れてみた。

石炭は真っ赤になるほど熱くなっていたが、足には熱さも痛みも感じられなかった。
石炭の橋は、熱く煮えたぎった溶岩の上を渡って、直接火山口まで通じている。
溶岩の上に立つと、火山から伝わる地響きが感じられた。それはまるで今にも噴火すると言わんばかりであった。
振動は次第次第に激しくなっていった。
足元の溶岩が煮え立ち始め、突然火山が噴火した。
噴火した溶岩からは魔神のような姿が見え、そこから声が響いた。

「お前が石を取りにきたというのなら、わしが成敗してくれよう!」


…まだ何も言ってないんだがな。
何という短絡的な魔物なんだ。
つーか、ジャイアントマウンテンにいたロック・ガーディアンみたいなパチモンな魔物ではないか。
こんなモノをありがたがっていたのか、アマズールの女どもは。
…どうせゾーフィタスが作ったものなんだろう。

言うまでもないが、勝負はあっさりとついた。
全員でディープフリーズを連続で唱えたのだから当然だ。
そして、ロック・ガーディアンが持っていたものと同じ赤い宝玉を手に入れる事が出来た。

「ふ…証は立てた。待ってろよ、クワリ・クボナ。俺ので熱く燃え上がらせてやるぜ」


「何言ってるんだろうね、兄さん」

「…」

もはやテレジアとフランソワの言う事など聞く気は無かった。
だが…


「そういえば、姉さん、ここに来る途中大量のゾンビが襲ってきたのを覚えているか?」

「ああ。アマズールゾンビだろう? しかし男みたいな死体ばかりだった気がする…」

「気じゃなくて、男しかいなかったんだ。哀れな種馬の馴れ果てがあれだ」

「何」

「思い出したんだ、姉さん。確か、アマズールは気に入った男を見つけると死ぬまでひたすらアマズールの女の奴隷にされるんだ。彼女たちの優秀な娘を産ませるためにね。…男の子だった場合は殺されるという、蛮習だな」


待て!!
まさか、俺はその種馬にされる所だったのか。

「考えれば分かるだろう、兄さん。あのやり手の女宰相が、兄さんが格好いいからってほいほい部屋に招くと思うかい?」

危ねーー…


言うまでもなく、俺達は「巡礼してきた。もう帰る」と言ってさっさと出ていった。
クワリ・クボナが「そう?残念ね。気がむいたらまたいらっしゃいね」と色目を使ってきた…。

種馬も幸せかも知れないと思いつつ、あのゾンビたちを思うとぞっとする。

さっさとここから抜け出して、あの髑髏の扉まで戻ろう。



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罠が止まり、いよいよ最奥にある尤も神聖な場所―何かの祭壇まで足を踏み入れる事が出来た。

だが、そう易々とはいかせてくれなかった。

壁の中と、祭壇の前の地中から何かが這い出てきた。
それは、おびただしい装飾品を体中に施された、生きる屍たちだった。
黄金のマスクをかぶっている、死者の中の王らしき者―アメン・タット・バット―と、彼に仕える神官―つまり、古代の王であったミイラが一斉に襲いかかってきたのである。


死者との戦いはある程度身に付いている。
ディスペル・アンデッドで、周囲のミイラどもは屠ったが、最後のアメン・タット・バットだけは手こずった。
さすが、死者の王の中の王と言われるだけはあった。
(何故そんな事を自分が知っているかと言われれば、近くに彫られていたカトルーシュ(王を示す神聖文字)を後で読んだからだ)

だが、それでも転職の繰り返しでレベルの上がりまくった自分たちの敵ではない。
フランソワの渾身のディープフリーズで勝負は決まった。

全てが終わると、兄上はさっそく探索を始めた。
ミイラたちが倒れた後には大量のアンクが落ちていたので、とりあえず拾っておくことにした。
後後役に立ちそうなので…
祭壇―否、小間の中に、粘土作りの小像が乾燥した花弁、骨、磨かれた石の玉に囲まれるようにして安置されていた。

美術価値とかそういうものは一切分からないが、これが貴重そうな宝である事には間違いない。
手を伸ばしかけたが、はたと止まった。
絶対に罠が仕掛けられている。

「やっとこれが役に立つわけだな」

兄上が引きずり回していた砂袋がこんな事に役立つとは思いもしなかった。
同じ重さ―否、何らかの重ささえ加えて置けば、罠は作動しないままだろう。

「いいか、お前達…音を立てるなよ」

珍しく緊張した声で、兄上は神経を集中させる。
今邪魔をしてはいけない。

それは一瞬の出来事だった。
兄上はしんちょうに、素早く像をかすめ取りながら、代わりに砂袋を置いた。
そのすり替えは、周りの花弁が全く動かないほどスムーズだった。

緑色の像を手に入れ、その像の顔を見て思った。
この像の顔は、通れなかった鉄格子の前にあった紋章とほぼ一致している。
あそこで何かをすれば、開くかもしれない。
そう思った自分たちは、ピラミッドの頂上まで登り、鉄格子の前まで足を運んだ。

門の天辺の丸い紋章には、奇妙な動物の首が刻み込まれていた。

そう、この手に持っている小さな像と一致しているのだ。
紋章の前で像を振ってみた。
すると、鉄格子が音を立てて開きだした。

奥には階段がある。
その上からは―何か沢山の人間がいるような気配がしていた。

「入れ…という事だろうな」

自分たちは意を決して、鉄格子の奥の階段を上った。
空き袋(現在兄さんが引きずっている砂袋)の近くに、髑髏の紋章の入った鍵があった。
地下の方に繋がる扉には、ちょうど髑髏の紋章があったのでこの入り口の鍵である事は言うまでもない。

ピラミッドは、王墓と言われている。
地下には恐らく、古代の王たちの亡骸があるかも知れない。

この城一帯のことだ、恐らくゾンビ化した王たちが襲ってくるだろう。
ぞっとしないな…。
もっとも、アマズール族の女戦士と戦うよりはまだ後味の悪さは無いだろうが。

扉を開けると、長い回廊になっていた。

「きっと宝があるんだろうな」

兄さんはこういう事に限っては、急にやる気を出す。

「…しかし、王の亡骸があり、かつ宝があるとすれば、罠もあるはず…気を付けられよ、兄う…」

姉さんが言葉を言い終わらない内に、私たちは足を踏み外してさらに下の階層に落とされた。

「いててて…なんだッ!?」

そう言えば、最後尾を歩いていた私が通り過ぎた時、何か「カチッ」という音がしたな…

「「そういう事はさっさと言え!!」」

兄さんも姉さんも…
同時に怒らなくたって…
まさか、私がスイッチを押してしまうとは思わなかったんだが…。

何とか這い上がって、今度は引っかからないようにした。

ここにはスイッチは二種類あり、床に仕掛けられているものと、壁に埋め込まれているものとがある。
どういう仕掛けなのか、床に仕掛けられているスイッチは、最後尾の人間が体重移動を終えるなり(歩数を計算した上で)スイッチの先にある落とし穴の蓋が開くようになっている。

墓荒し対策なのだろう。

しかし、面白い事に壁に埋め込まれたスイッチを押すと蓋がしまったりするのだ。

「よーし、落とし穴を全部回避しながらいくぞ。フランソワ、壁のスイッチを準じ押していけよ」


そう言われたから、私は近くのスイッチを押した。




ごごごご…


不穏な音が後ろから聞こえる。



「逃げろ!!」


叫んだのは、兄さんなのか姉さんなのかそれとも私なのか…
全員全速力で駆けた。
後ろから、通路一杯の大きさはあろうかという巨岩が転がってきたのだ!


ギリギリで回避したが…

「この野郎!!慎重に押さんかい!!」

罵倒と共に兄さんの拳骨が私に浴びせられた。

「スイッチを押せと言ったのは誰だ!」

「兄さんが押せと言っただろう!」

「だからって、全部押すのか貴様は!」

「じゃあ、また落とし穴にはまりたいのか!」

「ええい!!不毛な言い争いはやめろッ!!」


姉さんの一声で、私も兄さんも黙った。
確かに不毛ではあった…。


そして、最奥まで行くと一つの小部屋があった。


「これだけか?」

兄さんの落胆した声があった。
王墓というには、あまりにもお粗末な玄室だった。

「まさか…しかし…」

その時だった。


「うああッ!」

姉さんがいきなり闇に飲み込まれた。
先程の落とし穴よりもさらに深い。

「テレジア!」

「姉さん!」

私は躊躇する事なく、落とし穴に飛び込んだ。
姉さんを助けなくては!という思いでいっぱいだったので、何も考えていなかった。

足をくじきかけたものの、すぐ側に姉さんがいたので安心した。
姉さんは特に怪我はしていなかったが、今にも「面目ない…」と言いそうな表情だった。

「…?ここはさっきの場所とは違うな」

単なる落とし穴ではない。
まさか…


「兄さん、レビテイト(浮遊)を使って降りてきてくれ!宝が先にあるぞ!」

宝と聞くなり、兄さんはすでに軽やかに滑り降りていた。

「ただの落とし穴じゃなかったのか」

先程の地下の圧迫されたような空気ではなく、あきらかに異世界―何か一種の神聖さを感じさせる場所に私たちはいた。

落とし穴の先に行くと、広間に出た。
広間の先には―柩の間らしき部屋が見えた。

「あれか!」

駆け出しかけた兄さんは、やはり筆頭騎士だけの事はあった。
一瞬にして、身を反らし、直ぐさま引き返さなければ矢の雨に全身を射抜かれる所だった。


「くそ!やはり……」

巧妙な罠が仕掛けられていたものだ…。
墓に入った瞬間、矢の雨と毒ガスが噴きだしたのだ。
幸い、私たちがいる所まで毒ガスは及ばなかったが―

「罠の作動させるスイッチがあるなら、罠の作動を止めるスイッチがあるはず…」

今度の壁に埋め込まれたスイッチはまさしく止めるスイッチだった。

フェルディナントの日記


あの双子の巨人の家からそう遠くない所に新しい山道があった。
その山道を辿っていくと、小さな洞窟に当たった。
その一帯は、まるで誰かが何らかの理由で、"のみ"か何かで岩の中をくりぬこうとしていたように掘り返されていたものだ。
更に詳しく調べてみると、僅かに空気が流れているのが感じられる。

恐らく、向こう側に何らかの空間があるのではないか。
そこでつるはしを振るって壁を壊すと、
渓谷と洞窟をつなぐトンネルが出来た。

間違いない。
あの蛇(ミスタファファスとか言った)が言っていた、もう一つの”眼”はあの辺りにあるのではないか。
そこで俺たちはさらに進む事にした。

その部屋の壁の窪みには、ミイラが安置されていた。
いや、ここだけではない。
この辺り一帯が、一種の埋葬地らしい。

そして埋葬地であるここに踏み込んで、やたらとゾンビが襲いかかってくる。
その死体どもの多くは男のようだったが、一部は女のものもある。
動く死体は戦場で見てもゾッとしないものだが、こんな洞穴―それも沢山の死体に囲まれたこの場所では一層不気味なものだ。
すぐに俺たち全員はとっくに習得している「ディスペル・アンデッド」を最高パワーで発動させて、成仏させてやった。

そういえば、この洞窟だが、砂がいっぱい詰まっていて、それ以上先に進めそうになかった場所もある。
仕方がないため、俺たちはそれ以上進まず、反対方向へと進んだ。

先に進むと、壁には薄れ掛けた壁画が描かれていた。
それは日常の暮らしを描いたもののようで、
それは褐色の肌の人々が穀物の刈り取りや、
水浴びをしたり、踊っている様子だった。

さらに階段を上がると、また違う場所に来た。
壁は土で出来ていて、奇妙な文様に掘られた粘土の塊で築かれていた。
さっと見渡した限りでは、壁は全て同じ様なスタイルで作られていた。
それは、まるで王室か神聖な場所のような雰囲気だった。

外へ出てみると、自分たちは今巨大なピラミッドにいる事が分かった。
そこには山に上に饐えられ、周りからはジャングルで遮られた寺院となっていた。

ピラミッド―
それは、確かリグリアの近くにある、砂漠の国によく見られる墓場だ。
くそ、また墓場か…。

だが、そこが墓場ではないことに気付かされた。

ピラミッドを探索しだしてまもなく、俺たちは原住民―というか、この前見た、あの褐色肌の少女たちと出会ったのだ。

どれも珍奇な、いわゆるビキニ姿で頭に鳥の羽を着けた格好で手には槍を持っている。
そして俺たちをみるなり、奇声を上げて襲いかかってきたのだ。
それも一人や二人ではなく、数人で…。

これだけ大人数ではあきらかに俺たちは負ける。

その時だった。
女たちが何か口をぱくぱくと開いた後、ばたりと倒れたのだ。
否、倒れたのではない。
眠ったのだ。

「…ふう、効いたな」

テレジアが「スリープ」を使っていたのだ。
眠っている内に俺たちはその場を立ち去った。

「今回は殺さずに済んだが…。次運悪く出会ったら、恐らく斬り合いになるだろうな。なるべく鉢合わせない事を願うのみだな」

あいつ(フランソワ)の意見に今回ばかりは賛成だった。
敵なのだから、人間の女といえども容赦してはならない。
もっとも、俺はあまり気にしないが、テレジア達は気乗りしないようだ。
普段は戦場で多くの騎士たちを葬ってるはずなんだが…。
それでもって、その騎士たちの中にはそれなりに女もいるんだが…。

ともかく、なるべく鉢合わせないよう、俺たちは細心の注意を払った。
幸い、俺たちは巨大蟻の群や薄気味悪い蛇ぐらいで戦うに留まった。
ところで、その薄気味悪い蛇みたいな植物がいたんだが、倒した後、フランソワがそいつの体液をもろに浴びてしまっていた。
何というドジな…。

だが、それが後々役に立つとは思わなかった。

ピラミッドの石室の一つに宝箱があるのだが、それがどういうわけか手をかけた途端動き出すのだ。
何かいい方法はないかと思ったら、フランソワのネバネバが役に立った。

宝箱の着陸地点を計算し、フランソワがネバネバをその床にこすりつけると、宝箱は動けなくなった。

だが…


中身はただの空き袋だった。
これで何をしろと…?

ふとテレジアが思いつきから、先程の砂がいっぱいあった部屋に戻り砂を入れて砂袋でも作ろうという事になった。

面倒だが仕方ない…。



皇帝フリードルムの日記

アラム城の一階にある中央ホールの水のみ場近くにある右側の階段を上り、鍵を使って鉄格子を開いた。

確か、この辺り、最初に来たとき、何か風の音、否何かの泣き声のような音を聞いた場所だ。
やはりあれは余の気のせいではない!
あれは、何かの―否、牧師の泣き声なのだ。

この塔には牧師の霊、それは解放しなくてはいけない。
何故かそう思い余はスペードの鍵を使い最上階の扉を開いた。

部屋は空虚で静まり返っていた。
恐らく100年以上もの間、ここには誰も入ったことがないのだろう。
部屋を眺め回していると、
なにやら奇妙な光が部屋の中央に集まり、人型を形作り始めた。
程なくして、年老いてしなびた顔が見分けられるようになると、
それは話し始めた。

「ハロー? ハロー?? アニー、君かい?
見えないんだ、アニー……アニー、聞こえるかい? アニー?
アニー、どうして答えてくれないんだい?
私を忘れてしまったのかい? アニー、覚えていないのかい?
私が誰なのか、覚えていないのかい?」

その亡霊の異様な雰囲気に余もオズワルドもたじろぎそうになった。
辺りの空気も重く、冷たい。

「私は……私は誰なんだろう……
覚えている……そうだ忘れないぞ、
ずっと昔、私は……聖なる職に就いていた。
信心深く、人々から崇められる者だった。
私は覚えていない……いや、覚えているぞ! 
アニー、愛しいアニー、
ああ、アニー! 私達は道を誤った!
私は君との神聖な誓いを破った! 
愛しいアニー、私は罰を受けた! 
罰を受けたのだ……
私達の娘! この娘をどこかに隠さなければ……
奴等がやってきて、この娘を連れ去ってしまう!
やめてくれ! その娘は悪魔なのだ! 
彼女は罪によって齎された……
アニー、私達の罪のせいなのだ!
この娘は呪われている! 
そして我等もまた呪われている
……ああ、愛しのアニー……
王様に見つかった! 
王があの娘を連れて行ってしまう!
だが彼ならあの娘を守ってくれる……
アニー、彼なら我等も守ってくれる……
遠い遠い昔だ……
アニー、もはや私は居ない……
だが角笛は持っているぞ! 
忘れはしない、首の周りの寒気…
…そして光……
私は光に向かって歩いていた…
…ああ、それなのに、何かが私を引き戻す!
何かが、私が光へ進むのを邪魔している…
…手だ! 
光から伸びた手が私に何かを持ってきてくれた……
角笛だ! 

もう時間かい? 
アニー、もう時間なのかい? 
角笛を吹くときなのだね?
アニー、今行くよ! 
さぁ、これから角笛を吹くよ!」

亡霊は暗い色の角笛を持ち吹き鳴らした。

「アニー、光が見えるよ! 私のために光が戻ってきた!
サヨナラアニー、これから光のほうへ行くよ……」

亡霊は消滅し、暗い色の角笛が大きな音を立てて床に転がった。

あまりの事に、余もオズワルドも呆然とした。
その角笛が落ちる音がするまでは―

気の触れた牧師の霊はこれで、昇天したのだろう。

しかし…
ゾーフィタス




とりあえず、余はこの角笛を拾う事にした。
何故だか、後で必要になるような気がしたためだ。
皇帝フリードルムの手記

地下二階にある髑髏の扉に宝石をはめ込み、
近くにある部屋へは魔法使いの指輪を使って鉄格子を開いた。
なるほど、ここが…ゾーフィタスの部屋か。

鉄格子の先にあるドアには、次のように書かれていた。

「魔法使いの住処 ネコに注意」

ミスタファファスの言っていた猫とは、ゾーフィタスの飼い猫の事だろう。
魔法使いの猫の事だ、一筋縄ではいくまい…

中に入ると物音一つせず、極めて平和そうだった。
しかしそれは、地獄から悪魔ネコがやってくるまでの話だった。

大型犬よりも一回り大きい体格に、魔法の力か、透明化する緑の毛並みを持つその猫は、確かに悪魔ネコそのものだった。
非常に素早い動きでこちらを翻弄し、口から炎を吐きつつ、此方の背後を狙いながら引っかいてきた。
炎は小さなものだったが、盾のみでは防ぎきれず、爪の一閃で鎧の留め具が弾けた。
もうこの鎧は使い物にならないな…。
あの一撃が首に決まったと思うと…ぞっとする。

さてどうする。
この強敵を相手に、いきなりオズワルドは奴の前に立ちはだかった。
どう見ても、それは攻撃を受けるためのものとしか考えられない。
後で聞いたが、この手の魔物と戦う際には、敵の直接攻撃をわざと待って反撃するカウンターが効くのだという―
どっちにしろ危険過ぎる。

すると、オズワルドが正面に立ちはだかった事に相手はまんまとのせられた。
獲物の喉笛めがけ、猫は飛び掛かってきた。
迫り来る爪を正面から受け止め、同時にオズワルドも大剣を相手の眉間を狙って振り上げた。
悪魔猫の爪はオズワルドの左上腕と肩付近を切り裂き、オズワルドの大剣は相手の頭部へ食い込んだ。

間髪入れず、余は「ディープフリーズ(最強水系魔法)」にて悪魔猫を凍死へと誘った。

なんとか勝ったが…
意外とオズワルドの傷が深いため、少しだけ休憩をとることとした。
余があまり責めるものだから、オズワルドはかなり殊勝な態度となっていた。
言い過ぎたかな…
しかし、大事なオズワルドを見殺し、否、むざむざと悪魔どもの餌食にするなどと…考えたくもない…。

ふと、部屋を一通り見渡すと、四つの箱が置いてあるのを確認した。
確かこの部屋には、魔法があるとミスタファファスは言っていた。
余はその四つの箱に手をつけた。
罠を作動させないよう慎重に開けた宝箱の中には、魔法の書物や巻物、それに日記と塔の鍵を見つけた。

おそらくゾーフィタスの日記だろう。
何かこの城の秘密が記されてるかもしれないという期待から、余は読んでみることにした。
魔法使いの日記には、次のようなことが記されていた。
幸い、我々の使う文字と同じだったので簡単に読めた。

星の月 17の日
ついに、死体再稼動の実験で成功を収めた!
哀れな実験台は、牧師に連れられてやってきた女で、かの悪魔娘の淫らな母親だった。
死んでからもう三日も経っていながら、その女はもう一度息をし、歩き、見ることが出来るようになった。
これで心や魂まで再生することが出来ればよかったのだが、残念なことにその方法はない。
女は今や抜け殻だ。何か処置の方法が見つかるまで、女は城の塔の一つに閉じ込めておくことにする。
兎に角この成功を糧にして、次なる実験台が現れるのを待つとしよう。

星の月 23の日
ついにこの間、打ち首となった気の触れた牧師は、私の最新のテーマである霊体分離にとって、素晴らしい実験となった!
かの者の首に斧が振り下ろされたまさにその時、私はその魂が、この世から離脱できないように呪文をかけた。
かの者の心と魂を捕らえることができたことで、私のアイディアが間違っていないことが確かめられた。
生と死を思うが侭に操り、不死を得られるようになるのも、そう遠い先のことではないだろう。
そのときまで、"霊封じ"の力で牧師の霊は城のもう一つの塔に閉じ込められる。
どこかの愚か者が間違ってこの霊を解き放ったりしないように、鍵はここに隠しておくとしよう。

月の月 4の日
ついに我々はコズミック・フォージへ通じる隠された門を発見した!
これでペンまで後一歩だ!
すぐに旅立ちの支度をしなければならない。今夜、我等は飛ぶのだ!
月の月 13の日
フォージを盗まれた!
私のずるがしこい弟子、ミスタファファスの姿が見えない。
どこかにいるらしいという手掛かりすらない。
呪文を使って所在を突き止めようとしたがダメだった。
何度矢っても、あの食い過ぎの蛇の巣にいるという結果しか戻ってこない。
アレに食べられてしまったと考えるしかなさそうだ。

月の月 16の日
いよいよ"ペン"で何を書くかを決めた!
これで私は、王を終わらざる死へと誘った呪いから逃れられるはずだ……今夜、私はわが運命を刻み込む!


それが最後の文字だった。本には白いページが続いていた。
読み終わると、日記の綴じ代が解れ、バラバラになってしまった。

ふと、余はここに来る前に立ち寄った部屋の事を思い出した。
そこには、頭に穴を穿たれた大量の白骨死体が山の様に積み上げられていた。
恐らく…脳の手術、否、実験の被験者たちのなれの果てだろう。
悪魔のようなゾーフィタスの所業に、余は慄然とした。
いくらなんでも…このような人体実験は…。

ふと、塔に閉じこめられていた、あの死体の事を思い出した。
余のディスペルアンデッドを完全に無効化した…orzあのゾンビだ。
あれは―
まさか女…!
それも、ゾーフィタスの、人体稼働のためわざと殺され、肉体だけ現世に呼び起こされ―それも中途半端過ぎる状態で…。

ということは、反対側の塔には日記にあった、例の牧師の霊魂があるのだとでもいうのだろうか。

さらに探ってみると、部屋の横には何かのボタンがあり、押してみるとその先には倉庫があった。

物置の中を覗いてみると、隅のほうに曲がった杖が置き去りになっていた。
明らかにその存在自体が忘れられていたらしい。
これは使えるかもしれない。
余はその杖を手に入れ、横にあったスイッチを押して更に奥へと進んだ。
すると、また変わったものが置いてあった。

テーブルいっぱいのポーション、ビン、その他の薬品の山は戻ることの無い主のことをじっと静かに待っているかのようだった。
容器のうちいくつかは壊れておらず、よく密閉されていて、中身も悪くなかったり黒い塊になったりしていなかった。
テーブルの上にはその他に奇妙な小さい木の棒があり、その片方の端は赤く塗られていた。
残念ながら、ウィッグ神教はこうした錬金術を迫害してるので、余はあまりよく知らないのだが、なんでも錬金術師はこうした薬品を調合して、エリクサー(またの名をアニマムンディ)とやら不老不死の薬を作るらしいな。

何の知識もなく薬品を混ぜるということは非常に危険だったので、
混ぜることはしなかったが、物色してみることにしてみた。
赤、青、緑の薬に白い粉、それにこの赤い棒。
この赤い棒は一体なんなのだろうか。
手甲越しに触れてみても別段何も起こるわけではない。
白い粉につけてみても何か起こるわけでもなかった。
しかし、白い粉につけてから何かの摩擦があったのだろうか。
それは勢いよく燃え始めた。

オズワルドの顔が(仮面をかぶっているのだが)真っ青になっているのに気付いた。
どうやら、失敗したらしい。
そう思ったのは、余だけではない。
ほぼ同時に二人で逃げたその時、後ろで爆発音がした。

熱風と、いくらかの破片が背中に当たって痛い。
自業自得だが…
後ろを振り返ってみると、そこには壁に穴が開いていた。
その階段には見覚えがあった。下ってみると、
採掘場に繋がっていたのだった。
なるほど。
ジャイアントマウンテンとここは繋がっていたわけか。

よかった…
とりあえず、最悪の事態は避けられたようだ…(爆)


オズワルドの日記

双子の巨人の家にあった階段を上った所、ジャイアントマウンテンの頂上だった。
そこは一種の神聖さを感じさせる場所だった。
巨岩がまるで神殿の支柱のように左右に整然にならべられている。
その奥に、巨大な顔―否、岩に顔を掘ったオブジェが浮いていた。

何の気兼ねもなく、私と陛下が近寄った時だった。

「我は岩の守護者なり! 石を取りに来たのか?」

そんな声が岩のオブジェ―否、それは生き物だった。
いきなり話しかけられた際、陛下は咄嗟に「そうだ」と答えられてしまわれた。

「ならば成敗してくれよう!」

岩の守護者はそう言うなり、口から岩を吐き出して襲いかかってきた。

何とか避けているものの、足や腕や背中に何度も岩を喰らってしまった。
倒そうにも、私が両手剣で斬りかかってみても岩の妖魔―そもそも、武器攻撃は通用する相手ではないとは分かっていたが。

弱点は無いのか…。

そう思っていたとき、ふと守護者の額に青く妖しく輝く宝石がはめ込められているのに気付いた。
そこを攻撃すればいいのではないかと思い、渾身の突きを宝石めがけて出してみた。
すると、青い宝石が割れると同時に巨岩はバランスを失い、地中に落ちた。
その衝撃で、岩は粉々に砕け散った。
恐らく宝石はこの岩が動く魔力の源だったに違いない。

砕け散った岩の残骸―瓦礫の中から、赤く輝く宝玉を見つけた。

「これは、おそらくあの髑髏の門の“眼”の部分であろうな」

そこで一旦城の地下にあった、鍵が無い2つの扉を思い出した。
ちょうどミスタファファスから、髑髏の門とゾーフィタスの部屋が地下二階にあることを教えてもらっている。
戻る事にしたが、正直この山をまた降りたり、下の道に戻るのは困難である事は想像が付いた。

が。

意外にも戻れる事ができた。

双子の巨人の家内にスイッチと

「キケン! ボタンヲ オスト デグチニ ツナガル」

という警句が刻まれた札があった。

不安に感じつつも、スイッチを押してみた。
すると唐突に床が開き、私と陛下は落下した。

幸い怪我は無かったが、ここはどこだろう。
そう思って辺りを見回した時、そこはちょうどジャイアント・マウンテンを一周しきった地点だという事に気付いた。

城に戻るエレベーターのある地点と目と鼻の先だ。
すぐに私たちはエレベーターに乗って久々に城に戻った。
南の登り階段にて、大きな木製の機械が絶壁の上に設置されているのを見つけた。
見たところ、その機械は重いものを空中に放り投げるカタパルトのようなものらしい。
絶壁の向こう側には丸い標的らしきものがポツンと立っている。
機械を調べてみると、それはまだ十分に動きそうだった。
ただし、歯が掛け落ちた歯車を治し、
伸びきってしまったゴムバンドの代わりを見つけられればの話であるが。

「なるほど…このゴムバンド…それに使うのか」

早速私たちはゴムの紐をつなぎ合わせ、即席でゴムバンドを作ってみた。
新しいゴムバンドはピッタリだ。これで心置きなく何かを発射することができる。
随分と大きなものなので、人間一人飛ばす事だってできるのではないだろうか。
と思ったら、「ならお前で試してやる」と兄さんに押さえつけられた。

何で兄さんで試そうとした事がバレたんだろう。
そしてその兄さんに逆襲されるなんて。
同じ発想をしたという所に、嬉しさやら悲しさやらを感じた。
とりあえず、歯車が壊れていたおかげで私は吹っ飛ばされずにすんだ。

投げ飛ばされたら私は即死するんだが…。
しかし何か投げ飛ばすのには、人間より重い何かが必要―。
そう、岩だ。
ジャイアントヒルの頂上には石がゴロゴロと転がっている。
それを使えばいいじゃないかと、私たちは思った。
その前に、まずは壊れた歯車を直せばならないな。
スミッティーに頼めば直してくれるはず。

…あそこまで戻るのは面倒くさいが仕方がない。

私は壊れた歯車をスミッティーに手渡し、直せるかどうかを聞いてみた。
すると、スミッティーはこう答えた。

「フム……こいつぁ見事に壊れてる。
だけんども、どうしようもねえってほどじゃねえ。
直すにゃぁ1000GPかかるだよ……おらに直してほしいのか?」

私は首を縦に振り、承諾した。
手持ちの金は勿論1000GP以上ある。沢山レベル上げ+転職を繰り返したのだから。

何て事はない。

「ちょっくらそこで待ってな。おら、直してみっから……」

スミッティーは壊れた歯車を鍛冶場に持ち込み、何やら作業を始めた。

数分も経たない内に、見事に新品同様の歯車が手渡された。


カタパルトのある所に戻るまで、兄さんと姉さんとで岩を集め、早速カタパルトへ歯車も設置した。

岩は三発分。
分割しているとはいえ、巨岩を転がして歩くのは骨が折れた。
むしろ兄さんが「何で俺がこんな事しなきゃならんのだ!」とぶち切れて斧で岩を割りそうだったのを止める方が苦労した。

まず一発目は、兄さんがやる事になった。
調子を確かめるために標的の位置を確認して、ほぼ感覚的にバンドを引き絞り発射した。


はずれーーー

どこからともなくそんな声が聞こえた。

誰だろう…

次は、3人の中で若干弓術が得意な私が二発目を発射した。
方向、距離を感覚で測り―

ひゅんッ…



あーーたーーーーーりーーー

どこからともなくそんな声が聞こえた。
だから誰なんだ。
※プレイ中謎の声がします。実際に(笑)

カタパルトの先にある橋が降りてきた。
そう。
この橋を開通させることで、さらに進む事が出来るのだ。

…だが。
進んだ先は険しい登り道になっている。

「登れというのか!? ええい、面倒な」

山登りの疲れか、洞窟での探索での疲れなのか、兄さんはいつも以上(いつもと変わりないようだが)にピリピリしている。
さすがの姉さんも疲れと苛立ちの様なものを隠し切れていない。

それでもこの先に何かあると思い、何とか登る。
途中何度か3人仲良く落下した事もあるが、かすり傷程度で済んだのが幸いだ。


頂上にある洞窟の看板にはこのように書かれていた。
「ジャイアント・クリーグ グリンノ フタゴノ イエ」
ここは巨人の家なのだろうか。
近くで何か声がする。

「フィーフィーフォーフム、ニンゲンノチノニオイガスル」

「兄上!!フランソワ伏せろ!!」

姉さんの声がしなければ、突然暗闇から振るわれた剛腕にさらわれていただろう。

「グオオ、アニキ! ニンゲンダ! ヒサビサノニンゲンダ」

「オンナダ! オンナモイルトハゴウセイダ! 」

唸り声と共に姿を現したのは、醜い二匹の巨人たちだった。
身長はゆうに3メートルを超えている。
咆吼と共に、兄貴分が姉さんを、弟分が私と兄さんに飛び掛かってくる。

「くッ…」

姉さんは普段着けている鎧を外しているためか、いつも以上に俊敏に動き巨人を翻弄している。
昔から、人肉を喰らう魔物は大人よりも子どもを、男よりは女を狙うと言う。
だが、姉さんはそこら辺の騎士たちよりもかなり強い。
さらにこういう魔物との戦いも、この城一辺の戦闘で心得ている。
為す術もなく巨人や魔物の餌食になっていった乙女達とはわけが違うのだ。

「これでも食らえッ!」

兄さんがダークを青い服の巨人に投げつける。
足に突き刺さったそれに怒り狂った彼は、兄さんめがけて突進する。
その一瞬の隙を姉さんは逃さなかった。

「ハッ!」

何が起こったのか、彼には分からなかっただろう。
あまりにも姉さんの剣が描く弧は美しすぎた。
そして、その後血を噴水の様に噴き上げて、巨人は倒れた。
致命傷を受けたのだろう。

その後、一匹になった巨人を何とか倒したが…。
強敵だった。
頭を打ち据えられ、一瞬私は気絶し、兄さんもかなりひどい手傷を負った。
姉さんもギリギリだったが、あと一歩遅ければ首を食いちぎられていただろう。

…もしや、死者の日記にあった巨人はこいつらではなかろうか…

人肉を喰らう巨人がいなくなれば、この山も少しは安全になるだろうか。
否、まだ邪悪なものが側にいる。
それを私は肌で感じていた。
山頂にはまだ階段があった。
上に続くそれを私たちは意を決して登っていった。


皇帝フリードルム二世の日記

あの遺品の1つ―魔法使いの鍵は、洞窟の奥にあった鉄格子(恐らく監獄として使われた物でもあろう)の錠前を開くためのものだろう。

その余の考えは当たっていた。

片っ端から外していた時―ちょうど、北東の最奥の扉を開いた時だった。

「陛下ッ!!」

オズワルドがかばってくれなければ、余はその一撃を食らっていたかも知れない。
突然、影の中から巨大な蛇が飛び出してきて、こちらに向かって突進してきたのだ。
咄嗟に身構えるが、なかなか蛇は襲ってこない。否、それ以上攻撃の姿勢をみせようとせず、なんと人語でこちらに語りかけてきたのだ。

「いやぁ、そろそろ誰かが助けに来てくれる頃だって思ってたんだ!
どれくらい長いこと、
おいらがここに閉じ込められてたと思う?
エェ!? わっかんねえだろ!? 
百と二十年だぜ! なんてこったい!
ゾーフィタスの大ボケ野郎に、この尻尾が届くんなら、あんチキショウをギッタンギッタンにのしてやるのによぉ!」

呆然としてる我々に、蛇は‘会釈’した。

「おっと、失敬……
どうもありがとヨ、おめえさんのおかげで助かった。
おいら、ミスタファファスっていうんだ。
昔はゾーフィタスって魔法使いの弟子やってたんだが、
ちょっとした事であいつにここに閉じ込められて、
オマケにそのことを忘れちまいやがって…ああ、わかってるって。
おめえさん、なんでっこんなでっかい蛇が、すげぇ魔法使いの弟子なんかになれたか、わかんねぇんだろ?
教えてやるよ! おいら、本当は蛇なんかじゃねえんだ!
っていうか、少なくともあのどーしよーもねえ、呪われたペンが現れるまではそうじゃなかった!!
ちっきしょう! 考えただけで鳥肌が立ってくる! おいら、ちょっと忍び込んで、アレを一回使っただけなんだ!
お妃のお気に入りにしてもらいたくて、ちょいと
"さっそうと"していて
"カッコよく"してほしいって…
それと王様にやきもち焼かれないように
"安全"に過ごしたいって書いたんだ。
それがどーだい!?
お妃様がことの外蛇が御好きだっていうんで、
おいら蛇に変えられちまったんだ!
で、魔法使いの野郎がおいらをここに閉じ込めたんだ。
ペットにでもするつもりだったんだろうが、
おかげで王様からも安全ってわけだ!!
全く、あのどーしよーもない大ボケのペンめッ!」

120年も生きていたのか。
人間だろうが蛇だろうが、不自然である。
もしかしたら、これもペンの呪いなのだろうか。
死ぬに死ねず…という、災厄なのかもしれない。

一通り言いたい事を言ったのか、ミスタファファスは一息ついていた。
孤独感に相当苛まれていたのであろうな。
あの一気に捲し立てたのも…。
とりあえず、こやつから何か情報を得られるのではないかといくつか質問する事にした。

「ペンとはコズミック・フォージであろうな?」

「あの呪われたペン! 
もしこの辺りにあるんなら、おいらここから逃げるぜ!」

「ペンの呪いとはなんだ?」

「ベイン・オブ・ザ・コズミック・フォージ
ペンを使ってみな!
蛇になるよりもっとひでえことだってあるぜ……」

「ゾーフィタス……奴は何者だ?」

「ゾーフィタスは、さっきも言ったとおりかなりの魔法使いだ。
少なくとも昔はそうだった。奴ならどんな呪文でも知ってるだろう」

「王とはあの城の王なのか?」

「ああ、王様ね……知らん! 
気にしたこともない! それより食いもんねえか?」

「食い物なら手元に手ごろなのがあるが、
その前にもう一つか二つ答えて欲しい。
お妃様というのは?」

「王様の妃! あの方は爬虫類がお好きだ……
彼女に何が起きたのかは知らない」


SM気のある上には虫類好きか…

あまりまともな女じゃなさそうだな。

それともう1つ…
城主に囲われた女―レベッカについても聞かなければ。


「噂に聞いたレベッカというのは?」

「それはなんのことだい? 知らん。気にしたこともない」

「そうか。では、受け取るがよい」

そういって、余はミスタファファスに焼きトウモロコシを与えた。
スミッティーの店で病みつきになったので大量に買い込んで置いたのだ。
奴は体をくねらせて、焼きトウモロコシを丸呑みした。

「うぅぅーん。なんてうめぇんだ!」

しばらくがっついた後、やっとミスタファファスはそう言った。

「こいつはお礼をしなきゃいけねぇ!
魔法使いの住処を探って、それから"目"をどうにかするんだ!」

「魔法使いの住処は何処だ?」

「ゾーフィタスの住処は城の地下、しゃれこうべのドアの近くだ。
住処に入るには魔法の指輪がいるんだ」

「魔法の指輪? これか」

「ゾーフィタスは住処に入るのに指輪を使ってた。
ネコに引っかかれんなよ!
奴は住処に呪文を隠している」

「"目"をどうするのだ?」

「しゃれこうべのドアだよ! あけるには宝石が二ついる。
ゾーフィタスは死を封印するためにそいつを隠した!」

「死を封印? どういう事だ? 」

「しゃれこうべのドアは死へ通じる!
死がドアの向こうで待ってるよ!」

「そうか。情報提供ご苦労」

「じゃあな! がんばれよ!」

そう言い、ミスタファファスは昼寝でもするつもりか、するすると奥の隙間に身を滑り込ませていった。


それにしても…
この間のゾーフィタスといい、弟子のミスタファファスといい、
あのペン―コズミック・フォージには迂闊に手を出さぬ方がよい―

『そのペンを使って描かれた願望は叶う』

非常に魅力的なのだが…
代償が大きすぎる…

テレジアの日記


洞窟をさまよっている内に、再び外に出た。
採掘場も入り組んでいるが渓谷の道もかなり入り組んでいる。
なかには、桟橋が途中までしか出来ておらず、あと一歩で転落死―という危険な個所もいくつかあった。

そんな中、洞窟をでるなり―

そこには大きくて醜いトロールが、橋の下から登ってきて目の前に立ちはだかった。
そして大声で唸った!

「おらぁ通行料取るトロール、トール・トロールだ!
料金払わないとお前の頭取るぞー!」

トール…高いという意味ではあるが、異国の言葉では「取る」という意味もあるらしい。
駄洒落か、それは…。
無論、兄はいきなり斬りかかろうとしていた。

「誰が払うもんかッ」
と叫びそうになるのを、フランソワと自分で止める。

どうみても、我等兄弟で力を合わせた処でこの巨人に勝てるわけがない。見たところ、3メートルはありそうな巨体だ。
正面からのぶつかり合いならば、おそらくこちらに勝ち目はない―
ここは断崖絶壁―
そして巨人族は概して知恵の巡りが悪い―

「ああ、払おう」

なるべく笑顔で―本当に払うかの様な素振りを見せた。

「お前さんは賢い!」

そっと荷物入れにしている袋の中に手を入れる。
無論金ではない。
手に掴んだのは―

「では遠慮なく受け取れ!」

そう言って、自分は目潰しの粉を巨人にぶつけた。

「おおおおーッ」

目潰しをまともに喰らった巨人はがむしゃらに辺りを棍棒で殴りつける。
勿論、粉砕されているのは岩だ。
あれが自分たちの頭だと思うとぞっとする。

「これでも食らいやがれッ!」

兄上が盾で巨人を殴りつけ、フランソワが槍で足払いをする。
ちょうどそこは底知れぬ崖の目の前だった。
そう―
そのまま巨人は勢い余って、頭から転落していった。

そういえば、ここはジャイアント・マウンテン―
ただ巨大な山、というわけではなく、
ああいう旅人を狙った巨人たちがあちこちに潜んでいるのだろう―

だが、ここで襲ってくるのは巨人たちだけではない。
なんとドワーフたちも自分たちを見るなり、身ぐるみを剥ごうと襲ってくるのだ。
確かに、少々目立つ格好だが…(特にフランソワ)


しばらく山道を歩いていると、さび付いた桟橋があった。
そういえば、クィークェグから神秘の油を売って貰ったのだ。
掘り出し物とか言って。
錆びきったスイッチに緑色のどろりとした液体をかけた。
錆びは見事に落ち、スイッチの扉の開閉が出来るようになった。
コントロールパネルの中には、名前が書かれたラベルが付いている。
六つの小さなボタンが入っていた。
そしてそのパネルには、使い方の説明が彫り込まれていた。

*注意* 
ワインダー始動の直前に安全装置を必ず外すこと!
コイルラップの起動は安全装置をかけ、
ポンプの作動後5秒以上経過しなければ実行してはならない。
これに続いてトラスが上がるが、
ポンプの処理に付帯する全てに異常がない場合にのみ実行される。
最後にワインダーを始動させることにより、吊り上げ橋が起動する。
この橋の設置にあたって、エンジニア・スタッフは
全ての人に使用可能な操作方法を開発することに時間をかけた。
この取扱説明書はその成果であり、
このようにわかりやすいものが出来たことは、
我々の誇りとするところである。


確かにわかりやすいといえばわかりやすい。
説明書通りにスイッチを動かし、つり橋を降ろした。
そしてその先にある山を登っていくと、また金属の箱が置いてあった。
それにはこう書かれている。

この宝箱はJ.R.船長とその仲間のものなり。
汝に呪いあれ!

「ということは、海賊の秘宝か」

兄上がやたらと活気づく。
だが、自分もワクワクしないわけではない。
もしかしたら、素晴らしい武具があるのかも知れない。

罠に警戒しつつしゃがみながら開けてみると、何も起こらなかった。
箱を開けると紙が入っていた。
そして、小さなメモには次のように記されていた。

!情報ありがとう!
*クィークェグ*
追伸、感謝の印としてこれを受け取ってくれ。

そこにはどう贔屓目に見ても、売れ残りでしかないような
安っぽいネックレスが置いてあった。


その瞬間、ぶちッという、強い綱が引きちぎれるような音がした。
錯覚ではない。
隣にいる兄上の顔が凄まじい形相になっている。
子どもはおろか、訓練された騎士でも泣き出してしまいそうな、
悪鬼のような表情だ。

「ふ…」


ふざけやがってーーーー!!

あの野郎ォーーー!!



谷間に兄上の怒号が響き渡っていった。

今の兄上なら、恐らく一人でジャイアント・マウンテンじゅうの巨人たちを屠れそうだ。

「ちきしょう!!こうなったら、あのダイヤモンドを全てうっぱらってやる!!」

あのダイヤモンド―
奇妙な老人の顔が封じ込められているあの壁だ。

先程拾ったノミでいくつかヒビを入れたが割れる気配を見せなかったあの壁を全部壊すつもりだ。

「兄さん、無理だ! 壁を壊したら崩落の危険もあるんだぞ!」

「やかましい!!黙って手伝え!」

何故かフランソワを引きずり、兄上は一気に最下層まで降りていき、ガンガンダイヤモンドの壁にヒビを入れていった。

永遠に壊れないと思われた壁が―ダイヤモンドが砕け散った。

「よし!」

せっかく兄上はガッツポーズをしたのに、砕けた破片はまるで空気の中に溶け込んだかのように、煙だけを残して消えうせた。
その時の兄上の落胆振りは、自分でさえ同情を抱いてしまうほどだった。

しかしその直後、奇怪な表情をした何かが
完全に姿を現し此方に対して一方的に語りかけてきた。

それは生首だった。
否、生首というよりも、頭部だけが何らかの精神エネルギーになって具現化しているといっていいものだった。

「ついに自由だ! お前のことは知らぬ。
しかし、全てが始まったときから、
お前が来ることだけはわかっておった。
わしに残された時間は短い。
見ての通り、わしの体は遠き昔に滅びさった。
こうしてここに留まれるのも、昔のわしの力があってこその話。
しかしそれも、もはや費えようとしておる。
それ故大事なこと、お前の捜索の足がかりとなることだけを話そう。
一つの物語じゃ。お前、そしてお前の後に従うものたちへの警告とするがよい」

この時点で、何を言っているのか最初さっぱり分からなかった。
だが、その物体の後ろに垣間見えた骨―
あの骨は恐らくこの人物(?)の生前の姿の亡骸に違いない。

それに気付いた自分に、それはさらに語りかけてきた。

「わしはゾーフィタスとして知られた魔法使いの半身じゃ。
お前の目の前にある骨、それが元はゾーフィタスだったのじゃ。
百二十年ほど前、わしはコズミック・フォージの探索に携わっておった。
災いを齎すペンとして、この世界の全ての仕組みを書き表すために用いられたものじゃ。
ペンの話をするには、そのペンが盗まれた聖なる祭壇、即ちサークルの話をせねばならん。
ペンの力を開放せぬために、ペンは聖なるサークルの内側でしか使ってはならぬ、という規則が書き記されておった。
サークルからペンを取り出し、その規則を破るためには、どうにかして例外を作り出さなければならなかった。
ペンの力を開放し、更に書き記された規則には反しないような例外が必要だったのじゃ。
そこで、恐るべき例外が作り出された。
即ち、もしサークルの外でペンが用いられた場合、それを使って何かを書いた者は、まさにその書き記したことを自らに対する災いとして受ける。
そして、災いは新たなる世代が過ぎ去るまで、百と二十年の間そのものを苦しめ続け、その後に開放のときがやってくる。
ペンをサークルから取り出すために、この災いを呼ぶ例外が作られたのじゃ。
こうしてわしの骨がここに横たわっているのも、わしの行いによる災いの結果じゃ。
しかしその災いのときは、
お前がここに来てわしを解放することによって過ぎ去ろうとしておる。

さて、聞くがよい。
遠い昔に起こった事件の経緯を。
そして、この先お前が賢く、正しく振舞うための手がかりとするがよい。
わしはゾーフィタス。
魔術と力を持った偉大なる魔法使いじゃった。
一度力を持ったものの常として、わしはその甘美な味に酔いしれ、
味わうほどに更なる力を渇望するようになった。
それが故に、わしはわしと同じほどの渇望を持つ者と
汚らわしき同盟を組み、二人して世界の支配を夢に描いた。
かのペンの噂を聞きつけたとき、
それを手にすることで我等の勝利が不動のものとなることは明らかじゃった。
そこで我等は、コズミック・フォージを手にするための計画を練り始めた。
しかし、ペンをサークルから奪い去ったまさにその時、
我等は災いが直ちに降り注ぐということを知る羽目になったのじゃ。
かつてゾーフィタスであったわしは、この運命を逃れようと決意した。
そして、死せる定めの魔法使いゾーフィタスなる者が宇宙の全ての物事を知り、それによって恐ろしい破滅の宿命から逃れる術を学べるようにと、かのペンを用いて書き記したのじゃ。
確かにわしは全てに関するあらゆる知識を手に入れた。
そしてそれが故に、わしは二つの別々の生き物に切り離されてしまった。
この世界の全てのものは二つに分かれる性質を持っておる。あるか、ないか、その二つの状態が共存せねばならんのじゃ。
ところがわしは、この世の全ての知識を一つのものとして手に入れてしまった。
わしは全てを知り、同時に何も知らぬ状態でなければならなくなったのじゃ。
そしてわしは二つに分かれた。"善"を知るものが"悪"をも知るが如く。
知ることが出来るものは、全て二つに分かれる。
そして分けることが出来ないものは、決して知られることはない。
人は永遠に知ることを捜し求め、それ故に散り散りに別れていくのじゃ。
これぞ知識の本質、そのありようでお前の心の中でもそれに変わりは無い。
何かを知るとき、考えるとき、信じるとき、心に話しかけるとき、その仕組みがどうなっておるのかは、これとなんら変わりはしない。
残された時間は僅かじゃ。しかしまだ告げなければならぬことがある。
ゾーフィタスであったわしは死んだ。
しかしながら、わしの半身、いまひとつのゾーフィタスは死んではおらん。
そして、わしがお前を助けたようにもう一つのわしはお前を苦しめるじゃろう!
かの者の知識は完全ではない。何故ならその半分はわしが持っているからじゃ。
かの者の歩みは頼りなく、常に半分は正しく、半分は誤っておるじゃろう。
精神は暗く淀んだ水溜りの中を漂っているに違いない。
わしのごとく、かの者もまた気が触れておろう。
しかしお前はかの者を見出さねばならぬ。
何故なら、わしがそのペンと理由を知り、お前に語ったように、かの者は"場所"と"時間"を知っておるからじゃ。
だが"それが何か"は知らぬ。それはお前が、かのものから見つけ出さねばならぬじゃ。
コズミック・フォージの宿命、運命の手とペンはかの者と共にある!
これでわしは自由じゃ……」
そして幻影は消え失せていった。


頭が痛くなったのは、自分だけだろうか。
ふと見てみると、兄上はすでに考えるのを放棄していた。
フランソワも自分と同様に頭を痛めているようだ。

どうやら、“コズミック・フォージ”は実在するらしいが、結果はあの様な形だ。
恐らく、願いを書いた者にとって皮肉な形で完全に叶えてくれる、魔筆なのだろう。
迂闊に手にしてはならない、危険な品なのだろう。

あのゾーフィタスは、世の中の全ての英知を望んだがために、二律背反という真理によって2つに引き裂かれてしまったのだろう。
魂だけはあそこに閉じこめられ、ぬけがらになった身体はまだ生きているということなのだろう。
抜け殻といっても、ただの抜け殻ではなく、悪意に満ちた怪物となって襲ってくるのは間違いないだろう。

…この日記を読んで理解出来る者はいるんだろうか…。

ともかく、そのペンを手に入れるのは非常に危険な事は分かった。
それが分かればここから出るつもりなのだが…
この一帯から抜け出すには、あの城からしか抜け出せないだろう。

ああ…
どうしてくれるんですか、兄上…

その兄は、仕方為しにゾーフィタスの遺骸を漁っている。

「兄上…いくらなんでも死者を…」

「おい、これ魔法使いの指輪に鍵、魔法の杖だぜ! もしやこの鍵、この採掘場にある鉄格子の鍵じゃないのか?」


もしかしたら、城を抜け出すヒントになりうる物があるかも知れない。

結局自分とフランソワは探索を続ける事となった。
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