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わたしは自分がなにを感じ―なにを考え-ているかを書いてみたいと思う(キケロ)
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テレジアの日記


洞窟をさまよっている内に、再び外に出た。
採掘場も入り組んでいるが渓谷の道もかなり入り組んでいる。
なかには、桟橋が途中までしか出来ておらず、あと一歩で転落死―という危険な個所もいくつかあった。

そんな中、洞窟をでるなり―

そこには大きくて醜いトロールが、橋の下から登ってきて目の前に立ちはだかった。
そして大声で唸った!

「おらぁ通行料取るトロール、トール・トロールだ!
料金払わないとお前の頭取るぞー!」

トール…高いという意味ではあるが、異国の言葉では「取る」という意味もあるらしい。
駄洒落か、それは…。
無論、兄はいきなり斬りかかろうとしていた。

「誰が払うもんかッ」
と叫びそうになるのを、フランソワと自分で止める。

どうみても、我等兄弟で力を合わせた処でこの巨人に勝てるわけがない。見たところ、3メートルはありそうな巨体だ。
正面からのぶつかり合いならば、おそらくこちらに勝ち目はない―
ここは断崖絶壁―
そして巨人族は概して知恵の巡りが悪い―

「ああ、払おう」

なるべく笑顔で―本当に払うかの様な素振りを見せた。

「お前さんは賢い!」

そっと荷物入れにしている袋の中に手を入れる。
無論金ではない。
手に掴んだのは―

「では遠慮なく受け取れ!」

そう言って、自分は目潰しの粉を巨人にぶつけた。

「おおおおーッ」

目潰しをまともに喰らった巨人はがむしゃらに辺りを棍棒で殴りつける。
勿論、粉砕されているのは岩だ。
あれが自分たちの頭だと思うとぞっとする。

「これでも食らいやがれッ!」

兄上が盾で巨人を殴りつけ、フランソワが槍で足払いをする。
ちょうどそこは底知れぬ崖の目の前だった。
そう―
そのまま巨人は勢い余って、頭から転落していった。

そういえば、ここはジャイアント・マウンテン―
ただ巨大な山、というわけではなく、
ああいう旅人を狙った巨人たちがあちこちに潜んでいるのだろう―

だが、ここで襲ってくるのは巨人たちだけではない。
なんとドワーフたちも自分たちを見るなり、身ぐるみを剥ごうと襲ってくるのだ。
確かに、少々目立つ格好だが…(特にフランソワ)


しばらく山道を歩いていると、さび付いた桟橋があった。
そういえば、クィークェグから神秘の油を売って貰ったのだ。
掘り出し物とか言って。
錆びきったスイッチに緑色のどろりとした液体をかけた。
錆びは見事に落ち、スイッチの扉の開閉が出来るようになった。
コントロールパネルの中には、名前が書かれたラベルが付いている。
六つの小さなボタンが入っていた。
そしてそのパネルには、使い方の説明が彫り込まれていた。

*注意* 
ワインダー始動の直前に安全装置を必ず外すこと!
コイルラップの起動は安全装置をかけ、
ポンプの作動後5秒以上経過しなければ実行してはならない。
これに続いてトラスが上がるが、
ポンプの処理に付帯する全てに異常がない場合にのみ実行される。
最後にワインダーを始動させることにより、吊り上げ橋が起動する。
この橋の設置にあたって、エンジニア・スタッフは
全ての人に使用可能な操作方法を開発することに時間をかけた。
この取扱説明書はその成果であり、
このようにわかりやすいものが出来たことは、
我々の誇りとするところである。


確かにわかりやすいといえばわかりやすい。
説明書通りにスイッチを動かし、つり橋を降ろした。
そしてその先にある山を登っていくと、また金属の箱が置いてあった。
それにはこう書かれている。

この宝箱はJ.R.船長とその仲間のものなり。
汝に呪いあれ!

「ということは、海賊の秘宝か」

兄上がやたらと活気づく。
だが、自分もワクワクしないわけではない。
もしかしたら、素晴らしい武具があるのかも知れない。

罠に警戒しつつしゃがみながら開けてみると、何も起こらなかった。
箱を開けると紙が入っていた。
そして、小さなメモには次のように記されていた。

!情報ありがとう!
*クィークェグ*
追伸、感謝の印としてこれを受け取ってくれ。

そこにはどう贔屓目に見ても、売れ残りでしかないような
安っぽいネックレスが置いてあった。


その瞬間、ぶちッという、強い綱が引きちぎれるような音がした。
錯覚ではない。
隣にいる兄上の顔が凄まじい形相になっている。
子どもはおろか、訓練された騎士でも泣き出してしまいそうな、
悪鬼のような表情だ。

「ふ…」


ふざけやがってーーーー!!

あの野郎ォーーー!!



谷間に兄上の怒号が響き渡っていった。

今の兄上なら、恐らく一人でジャイアント・マウンテンじゅうの巨人たちを屠れそうだ。

「ちきしょう!!こうなったら、あのダイヤモンドを全てうっぱらってやる!!」

あのダイヤモンド―
奇妙な老人の顔が封じ込められているあの壁だ。

先程拾ったノミでいくつかヒビを入れたが割れる気配を見せなかったあの壁を全部壊すつもりだ。

「兄さん、無理だ! 壁を壊したら崩落の危険もあるんだぞ!」

「やかましい!!黙って手伝え!」

何故かフランソワを引きずり、兄上は一気に最下層まで降りていき、ガンガンダイヤモンドの壁にヒビを入れていった。

永遠に壊れないと思われた壁が―ダイヤモンドが砕け散った。

「よし!」

せっかく兄上はガッツポーズをしたのに、砕けた破片はまるで空気の中に溶け込んだかのように、煙だけを残して消えうせた。
その時の兄上の落胆振りは、自分でさえ同情を抱いてしまうほどだった。

しかしその直後、奇怪な表情をした何かが
完全に姿を現し此方に対して一方的に語りかけてきた。

それは生首だった。
否、生首というよりも、頭部だけが何らかの精神エネルギーになって具現化しているといっていいものだった。

「ついに自由だ! お前のことは知らぬ。
しかし、全てが始まったときから、
お前が来ることだけはわかっておった。
わしに残された時間は短い。
見ての通り、わしの体は遠き昔に滅びさった。
こうしてここに留まれるのも、昔のわしの力があってこその話。
しかしそれも、もはや費えようとしておる。
それ故大事なこと、お前の捜索の足がかりとなることだけを話そう。
一つの物語じゃ。お前、そしてお前の後に従うものたちへの警告とするがよい」

この時点で、何を言っているのか最初さっぱり分からなかった。
だが、その物体の後ろに垣間見えた骨―
あの骨は恐らくこの人物(?)の生前の姿の亡骸に違いない。

それに気付いた自分に、それはさらに語りかけてきた。

「わしはゾーフィタスとして知られた魔法使いの半身じゃ。
お前の目の前にある骨、それが元はゾーフィタスだったのじゃ。
百二十年ほど前、わしはコズミック・フォージの探索に携わっておった。
災いを齎すペンとして、この世界の全ての仕組みを書き表すために用いられたものじゃ。
ペンの話をするには、そのペンが盗まれた聖なる祭壇、即ちサークルの話をせねばならん。
ペンの力を開放せぬために、ペンは聖なるサークルの内側でしか使ってはならぬ、という規則が書き記されておった。
サークルからペンを取り出し、その規則を破るためには、どうにかして例外を作り出さなければならなかった。
ペンの力を開放し、更に書き記された規則には反しないような例外が必要だったのじゃ。
そこで、恐るべき例外が作り出された。
即ち、もしサークルの外でペンが用いられた場合、それを使って何かを書いた者は、まさにその書き記したことを自らに対する災いとして受ける。
そして、災いは新たなる世代が過ぎ去るまで、百と二十年の間そのものを苦しめ続け、その後に開放のときがやってくる。
ペンをサークルから取り出すために、この災いを呼ぶ例外が作られたのじゃ。
こうしてわしの骨がここに横たわっているのも、わしの行いによる災いの結果じゃ。
しかしその災いのときは、
お前がここに来てわしを解放することによって過ぎ去ろうとしておる。

さて、聞くがよい。
遠い昔に起こった事件の経緯を。
そして、この先お前が賢く、正しく振舞うための手がかりとするがよい。
わしはゾーフィタス。
魔術と力を持った偉大なる魔法使いじゃった。
一度力を持ったものの常として、わしはその甘美な味に酔いしれ、
味わうほどに更なる力を渇望するようになった。
それが故に、わしはわしと同じほどの渇望を持つ者と
汚らわしき同盟を組み、二人して世界の支配を夢に描いた。
かのペンの噂を聞きつけたとき、
それを手にすることで我等の勝利が不動のものとなることは明らかじゃった。
そこで我等は、コズミック・フォージを手にするための計画を練り始めた。
しかし、ペンをサークルから奪い去ったまさにその時、
我等は災いが直ちに降り注ぐということを知る羽目になったのじゃ。
かつてゾーフィタスであったわしは、この運命を逃れようと決意した。
そして、死せる定めの魔法使いゾーフィタスなる者が宇宙の全ての物事を知り、それによって恐ろしい破滅の宿命から逃れる術を学べるようにと、かのペンを用いて書き記したのじゃ。
確かにわしは全てに関するあらゆる知識を手に入れた。
そしてそれが故に、わしは二つの別々の生き物に切り離されてしまった。
この世界の全てのものは二つに分かれる性質を持っておる。あるか、ないか、その二つの状態が共存せねばならんのじゃ。
ところがわしは、この世の全ての知識を一つのものとして手に入れてしまった。
わしは全てを知り、同時に何も知らぬ状態でなければならなくなったのじゃ。
そしてわしは二つに分かれた。"善"を知るものが"悪"をも知るが如く。
知ることが出来るものは、全て二つに分かれる。
そして分けることが出来ないものは、決して知られることはない。
人は永遠に知ることを捜し求め、それ故に散り散りに別れていくのじゃ。
これぞ知識の本質、そのありようでお前の心の中でもそれに変わりは無い。
何かを知るとき、考えるとき、信じるとき、心に話しかけるとき、その仕組みがどうなっておるのかは、これとなんら変わりはしない。
残された時間は僅かじゃ。しかしまだ告げなければならぬことがある。
ゾーフィタスであったわしは死んだ。
しかしながら、わしの半身、いまひとつのゾーフィタスは死んではおらん。
そして、わしがお前を助けたようにもう一つのわしはお前を苦しめるじゃろう!
かの者の知識は完全ではない。何故ならその半分はわしが持っているからじゃ。
かの者の歩みは頼りなく、常に半分は正しく、半分は誤っておるじゃろう。
精神は暗く淀んだ水溜りの中を漂っているに違いない。
わしのごとく、かの者もまた気が触れておろう。
しかしお前はかの者を見出さねばならぬ。
何故なら、わしがそのペンと理由を知り、お前に語ったように、かの者は"場所"と"時間"を知っておるからじゃ。
だが"それが何か"は知らぬ。それはお前が、かのものから見つけ出さねばならぬじゃ。
コズミック・フォージの宿命、運命の手とペンはかの者と共にある!
これでわしは自由じゃ……」
そして幻影は消え失せていった。


頭が痛くなったのは、自分だけだろうか。
ふと見てみると、兄上はすでに考えるのを放棄していた。
フランソワも自分と同様に頭を痛めているようだ。

どうやら、“コズミック・フォージ”は実在するらしいが、結果はあの様な形だ。
恐らく、願いを書いた者にとって皮肉な形で完全に叶えてくれる、魔筆なのだろう。
迂闊に手にしてはならない、危険な品なのだろう。

あのゾーフィタスは、世の中の全ての英知を望んだがために、二律背反という真理によって2つに引き裂かれてしまったのだろう。
魂だけはあそこに閉じこめられ、ぬけがらになった身体はまだ生きているということなのだろう。
抜け殻といっても、ただの抜け殻ではなく、悪意に満ちた怪物となって襲ってくるのは間違いないだろう。

…この日記を読んで理解出来る者はいるんだろうか…。

ともかく、そのペンを手に入れるのは非常に危険な事は分かった。
それが分かればここから出るつもりなのだが…
この一帯から抜け出すには、あの城からしか抜け出せないだろう。

ああ…
どうしてくれるんですか、兄上…

その兄は、仕方為しにゾーフィタスの遺骸を漁っている。

「兄上…いくらなんでも死者を…」

「おい、これ魔法使いの指輪に鍵、魔法の杖だぜ! もしやこの鍵、この採掘場にある鉄格子の鍵じゃないのか?」


もしかしたら、城を抜け出すヒントになりうる物があるかも知れない。

結局自分とフランソワは探索を続ける事となった。
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