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わたしは自分がなにを感じ―なにを考え-ているかを書いてみたいと思う(キケロ)
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今残っている鍵は、『鐘楼の鍵』だけとなった。
あの渓谷を渡るのに必要なものを探すため、例の鐘楼に登る事にした。

一階の西側にある塔を登っていくとこんな言葉が記されている銅板があった。

「鐘楼の開放は厳禁」

ドアを開けると、天井には大きな吹き抜けが見えた。
巨大な吹き抜けから上を見上げても、見えるのはただの暗闇だけだった。
しかし床の上には、小さな鼠のような生き物の死骸、血の痕、フン等上から落ちてきたものが散らばっていた。

螺旋階段を上り続け、最上階まで達した。
通路の先に大きくて黒ずんだ鐘が、鐘楼の頂上に静かにぶら下がっていた。
その鐘は薄黒いカビに覆われており、ところどころ蝙蝠の糞が染みを作っている。
そして、太くて長いロープが鐘から下の吹き抜けに下がっていた。
このロープを掴んで吹き抜けに飛び込めば鐘が鳴るのだろう。

「このロープを使って渡れば、きっと向こう側に飛び移れるだろう」

そう私は言ったが、兄さんと姉さんはあまりイイ顔をしない。
なんといっても、危険すぎる。
一歩間違えたら転落死だ。

「まあお前一人で飛び込んでも俺は別に気にしないがな」

…相変わらず冷たい兄だな。

「それに、フランソワ…。恐らく鐘楼にいるコウモリに襲われる危険もあるぞ」

「じゃあ、私一人で向こう側を探してみる。十分して戻らなかったら先に進んでくれ」

この提案に姉さんは猛反対しそうだったが、あっさり兄さんがOKを出したために私は鐘楼のロープをぎゅっと掴み、思い切って地面を蹴った。


ゴーーーーーーーーン


ゴーーーーーーーーーーーーーーン


鐘は鐘楼の住人の目を覚ましてしまったようだ。

「フランソワてめーーーッ!」

兄さんが激昂する声を背中で聞いた。
どうやら、コウモリたちは待っている兄さんと姉さんの方に襲いかかったようだ。

「兄さん、姉さん頑張れ」

小さい声で言って私はそっと探索に乗り出した。

といっても探索はものの一分で終わった。
向こう側には小部屋が1つしか無かったのだから。
鍵を使って開けると、そこには複数本の鐘のロープのスペアがあった。

そのうちの一本を俺はいただくことにした。
これに早速、フックにロープを結びつけて固く縛りつけた。
これは非常に重い。
少なくとも50ポンドはくだらないだろう。
こんな重いものは、さっさとしかるべきところで使ってしまおう。

そう思って再び鐘楼のロープを使って飛び移った時、いきなり兄さんの鉄拳が迎えてくれた。

「痛いじゃないか、兄さん。せっかく私が危険を犯して大事な物を手に入れたのに」

「何が大事なものだッ! お前のせいで俺は二度も毒コウモリに襲われて死にかけたんだぞ!」

「結局生きているんだからいいじゃないか」

「お前という奴はーーッ!」

不毛な兄弟喧嘩を派手にした後、私たちは例の渓谷へ向かった。

目の前にはまるで底なしの落とし穴のような巨大な渓谷が口を開いている。
鍵爪のついたロープを渓谷の向こう側に投げると、大きな岩に上手く引っかかった。
もう片方のロープの端を固定した岩に固定した後、ロープに命を託して、渓谷の向こう側に渡った。

勿論、私から先に、だった。

「兄さん重いから、最後に渡らないとな」

「やかましい。万が一落ちるなら、貴様も道連れだ」

ロープをつたって渡っている時もこんな喧嘩が出来るんだから、ある意味で私たちは余裕を忘れてないと思っている。

どこか、それほど遠くない辺りから何やら吸い込むような物音が聞こえてくる。
くちゃくちゃと何か食べているような音だ。

前方に不気味なものが横たわっている
…それは、ただそこにいるだけのようだ。
どうもさっきの吸い込む音は、これが立てていたらしい。
その不思議なものに気をつけて近づいてみると、根本のところに太い管のようなものが付いているのが見えた。
どうも植物らしい。

おっと! 



腹が減っているようだ!
それは素早い動きで、私たちに襲い掛かってきた。

緑の体をした食虫植物を巨大化させたもの、差し詰め人食い植物といったところか。
まるで肉食動物の口のように鋭い棘の付いた口を広げてガチガチと鳴らしながら噛み付いてくる。

いや、それだけじゃなかった。


姉さんが突然転倒する。
おかしい。
今まで何も感じてなかっ…

兄さんまでも倒れる。

気付くと、その植物の口から白い気体らしきものが吐き出されている。

その場で私は理解した。
あれを吸い込んではいけないと。
恐らく、危険地帯で引きずりこまれた死体たちは―こいつらの出す白い気体…霧を吸い込んで何も分からない内に食い殺されたのだろう。

私も段々目の前が霞んできた。
必死に起きようとしても、植物たちはさらに私までも眠りに誘おうとさらに白い霧を放出しだす。

まずい。
このままでは、私たち3人とも…


渾身の力を振り絞り、私は一か八かかけてアイスボールを詠唱した。
氷の嵐が降り注ぎ、植物たちがのたうち回る。
周囲の気温が下がったせいなのか、あるいは頭にアイスボールがぶつかったのか、兄さんがやっと起きてくれた。

「くそ、こいつらまだ生きてやがる…!」

しぶとい植物たちに手を焼いたが、それでも何とか姉さんも目覚めたおかげで何とかしのげた。
いつもと様子の違う獲物に一瞬戸惑ったことが命取りになったようだ。

兄さんの振り回した斧に切断された頭部(と思われる部分)が飛ばされた所で終わった。


「危なかったな…」

そう言ってさらに奥に進むと、「E-Zエレベーター 下り」と書いてある看板があり、その下には妙なスイッチがある。
それを押してみると、床がゆっくりと動き沈んでいった。

止まった所で、空気が先程より澄んでいるのに気付いた。
あの息が詰まるような城から出た開放感でいっぱいになる。

エレベーターを降りてトンネルを抜けて山から出ると、
目の前には巨大な渓谷が広がっていた。
いくつもの橋が、網の目のように谷の間に渡されている。
そして頭上―遥か彼方には、渓谷の真ん中辺りの最も深い谷から立ち上がる壮大な山の頂が窺えた。

ジャイアントマウンテン―

巨大な山の異名をとるのにピッタリだった。

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