南の登り階段にて、大きな木製の機械が絶壁の上に設置されているのを見つけた。
見たところ、その機械は重いものを空中に放り投げるカタパルトのようなものらしい。
絶壁の向こう側には丸い標的らしきものがポツンと立っている。
機械を調べてみると、それはまだ十分に動きそうだった。
ただし、歯が掛け落ちた歯車を治し、
伸びきってしまったゴムバンドの代わりを見つけられればの話であるが。
「なるほど…このゴムバンド…それに使うのか」
早速私たちはゴムの紐をつなぎ合わせ、即席でゴムバンドを作ってみた。
新しいゴムバンドはピッタリだ。これで心置きなく何かを発射することができる。
随分と大きなものなので、人間一人飛ばす事だってできるのではないだろうか。
と思ったら、「ならお前で試してやる」と兄さんに押さえつけられた。
何で兄さんで試そうとした事がバレたんだろう。
そしてその兄さんに逆襲されるなんて。
同じ発想をしたという所に、嬉しさやら悲しさやらを感じた。
とりあえず、歯車が壊れていたおかげで私は吹っ飛ばされずにすんだ。
投げ飛ばされたら私は即死するんだが…。
しかし何か投げ飛ばすのには、人間より重い何かが必要―。
そう、岩だ。
ジャイアントヒルの頂上には石がゴロゴロと転がっている。
それを使えばいいじゃないかと、私たちは思った。
その前に、まずは壊れた歯車を直せばならないな。
スミッティーに頼めば直してくれるはず。
…あそこまで戻るのは面倒くさいが仕方がない。
私は壊れた歯車をスミッティーに手渡し、直せるかどうかを聞いてみた。
すると、スミッティーはこう答えた。
「フム……こいつぁ見事に壊れてる。
だけんども、どうしようもねえってほどじゃねえ。
直すにゃぁ1000GPかかるだよ……おらに直してほしいのか?」
私は首を縦に振り、承諾した。
手持ちの金は勿論1000GP以上ある。沢山レベル上げ+転職を繰り返したのだから。
何て事はない。
「ちょっくらそこで待ってな。おら、直してみっから……」
スミッティーは壊れた歯車を鍛冶場に持ち込み、何やら作業を始めた。
数分も経たない内に、見事に新品同様の歯車が手渡された。
カタパルトのある所に戻るまで、兄さんと姉さんとで岩を集め、早速カタパルトへ歯車も設置した。
岩は三発分。
分割しているとはいえ、巨岩を転がして歩くのは骨が折れた。
むしろ兄さんが「何で俺がこんな事しなきゃならんのだ!」とぶち切れて斧で岩を割りそうだったのを止める方が苦労した。
まず一発目は、兄さんがやる事になった。
調子を確かめるために標的の位置を確認して、ほぼ感覚的にバンドを引き絞り発射した。
はずれーーー
どこからともなくそんな声が聞こえた。
…
誰だろう…
次は、3人の中で若干弓術が得意な私が二発目を発射した。
方向、距離を感覚で測り―
ひゅんッ…
あーーたーーーーーりーーー
どこからともなくそんな声が聞こえた。
だから誰なんだ。
※プレイ中謎の声がします。実際に(笑)
カタパルトの先にある橋が降りてきた。
そう。
この橋を開通させることで、さらに進む事が出来るのだ。
…だが。
進んだ先は険しい登り道になっている。
「登れというのか!? ええい、面倒な」
山登りの疲れか、洞窟での探索での疲れなのか、兄さんはいつも以上(いつもと変わりないようだが)にピリピリしている。
さすがの姉さんも疲れと苛立ちの様なものを隠し切れていない。
それでもこの先に何かあると思い、何とか登る。
途中何度か3人仲良く落下した事もあるが、かすり傷程度で済んだのが幸いだ。
頂上にある洞窟の看板にはこのように書かれていた。
「ジャイアント・クリーグ グリンノ フタゴノ イエ」
ここは巨人の家なのだろうか。
近くで何か声がする。
「フィーフィーフォーフム、ニンゲンノチノニオイガスル」
「兄上!!フランソワ伏せろ!!」
姉さんの声がしなければ、突然暗闇から振るわれた剛腕にさらわれていただろう。
「グオオ、アニキ! ニンゲンダ! ヒサビサノニンゲンダ」
「オンナダ! オンナモイルトハゴウセイダ! 」
唸り声と共に姿を現したのは、醜い二匹の巨人たちだった。
身長はゆうに3メートルを超えている。
咆吼と共に、兄貴分が姉さんを、弟分が私と兄さんに飛び掛かってくる。
「くッ…」
姉さんは普段着けている鎧を外しているためか、いつも以上に俊敏に動き巨人を翻弄している。
昔から、人肉を喰らう魔物は大人よりも子どもを、男よりは女を狙うと言う。
だが、姉さんはそこら辺の騎士たちよりもかなり強い。
さらにこういう魔物との戦いも、この城一辺の戦闘で心得ている。
為す術もなく巨人や魔物の餌食になっていった乙女達とはわけが違うのだ。
「これでも食らえッ!」
兄さんがダークを青い服の巨人に投げつける。
足に突き刺さったそれに怒り狂った彼は、兄さんめがけて突進する。
その一瞬の隙を姉さんは逃さなかった。
「ハッ!」
何が起こったのか、彼には分からなかっただろう。
あまりにも姉さんの剣が描く弧は美しすぎた。
そして、その後血を噴水の様に噴き上げて、巨人は倒れた。
致命傷を受けたのだろう。
その後、一匹になった巨人を何とか倒したが…。
強敵だった。
頭を打ち据えられ、一瞬私は気絶し、兄さんもかなりひどい手傷を負った。
姉さんもギリギリだったが、あと一歩遅ければ首を食いちぎられていただろう。
…もしや、死者の日記にあった巨人はこいつらではなかろうか…
人肉を喰らう巨人がいなくなれば、この山も少しは安全になるだろうか。
否、まだ邪悪なものが側にいる。
それを私は肌で感じていた。
山頂にはまだ階段があった。
上に続くそれを私たちは意を決して登っていった。
PR