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わたしは自分がなにを感じ―なにを考え-ているかを書いてみたいと思う(キケロ)
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―オズワルドの手記―

さて数日ぶりにこの手記を書く。
何と言っても、あれ以来襲撃が激しくなり、一々記す暇が無かったのだ。


ル・モンテスとクィークェグの要求する物(正確にはスヌープチェリと宝の隠し場所の情報)を見つけない限り何にもならない。

そのため、陛下と私は危険を覚悟で城内の部屋を1つずつ開けて行くことにした。

120年前の滅亡(とはいうものの、滅亡とは言い難い何かがあった)以来開くことの無かった部屋はことごとくクモの巣と大量の埃で覆われていた。

それにしても陛下にあんな特技があったとは…。


やはり滅亡したとはいえ、きちんと城の部屋は鍵がかかってあった。
一々鍵を見つけなければならないかと思った時、陛下が何やらごそごそと扉に細工をなさっているのだ。

王族は大抵鍵作りを幼い頃教わる、とどこかで聞いた事がある。
しかし、まさか陛下が鍵外しの名人であらせられるとは…。

「うむ、これで入れるぞ」

物凄く楽しそうでいらっしゃった…
高じて無事帝国に戻った後、片っ端から鍵外しに取りかかりなさったらどうしようと一瞬思ってしまった…。

ともかく、陛下の特技のおかげであちこち入れるようになった。

かつての玉座の間や大会議場などにも入ることが出来た。
そこはもはや過去の栄華の断片すら見かけられないほど朽ち果ていた。

かつては権力の甘美な香りに包まれて居た偉大なる玉座も今や部屋の上座で、果てしない時の流れに責め苛まれている。
まるで、自らの最後の言葉によって衰えることを命じられたかのように。
もしこの崩れ落ちた部屋の色あせた玉座に下された、何らかの裁きが残っているならば、それは既に形を為さないほど崩れた高座の崩壊の山の中からかき集めなければならないだろう。
そして、それは汚らわしく悪臭を放ち、もはや何の意味も無く涙ながらに奪い去られた栄光を語るに違いない。

ふと、陛下や帝国の事にも思いを馳せてしまった。
400年という(私の祖国より短いとはいえ)長き歴史を持つ帝国も、いずれは衰微していってしまうのだろうか―
だが、それは遠い未来の話であろう、と私は思う。
今の我が軍の勢いたるや…と思いかけて、今自分がこの荒れ果てた忌まわしい城にいる事を想いだした。

閑話休題。


その中でも立派な私室を二階にて発見した。
その部屋の壁は、天使や薔薇や蔓草を彫った雪花石膏で飾られ、歳月を経て石膏はどす黒くなっていたが、その見事な細工は真に印象的だった。
大の男三人が横になってもまだ余裕がありそうな、大きなベッドの残骸が床に崩れ落ちており、元は家具だった朽ちた木材が部屋中に散らばっていた。
その優美な雰囲気といい、落ちていた破片(恐らく家具に施された彫刻の一部だろう)からして、恐らくこの部屋は妃の寝室だろう。
が、彼女が若い男達との奇妙な儀式を行っていた、という噂が本当かどうかはわからなかった。
私もあまり詳しくないが、アラム最後の王妃は王に劣らぬ程邪悪だったと聞く。

恐らく降霊術やら、黒魔術やら…そういう儀式なのだろう。

そう私も陛下も思っていた。


妃の部屋の奥のドアを開いた。
明るく彩られた壁は、昔はこの小さな寝室を際立たせていたことだろう。
さすがに当時の艶は消えうせていたが、それでも明るく陽気な様子は残っていた。

そこで小部屋にあったトランクを開けてみた…


その途端私と陛下は絶句した。


中に入っていたのは、ちょっと吃驚する様な……
一種の鎧というかなんというか…
…そんな代物だった。

それは黒い皮製で、尖った金属の飾り鋲で縁取られたごつい作りのブラだった。
その使い道ははっきりしないが、もし相応しい人物が着用されたなら、(えへんッ 注:筆記してる最中むせた模様)
”ある種の魅力”を醸しだす可能性があるようだった。


さらに困ったコトに…


「一体ここの妃は何をしておったのだ…」

陛下が取り出した物―

その奇妙なブラの下から出てきたのは、黒くて長い―鞭だった。


「…全部戻して置くぞ」


何となく見てはならぬ物を見てしまった。

塔にて、腐乱しきった気味の悪い、
得体の知れない死骸を見たとき以上の衝撃だった…。
(その死体は私の手によって、塔の外に投げ捨てておいた)



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皇帝フリードルムの手記

あれから数時間―
ネズミ退治後の疲れも癒えた我等は地下の方を再び探索していた。
どうやら地下は、牢屋と兵士達の宿舎、2つのエリアに別れているようだった。

とりあえず、片っ端から部屋を調べてみる。

手近な扉を開けてみると何て事はなかった。
部屋にあるものと言えば、部屋中に散らばっている簡易寝台の破片だけだった。


…ちょっと待った!

誰かが居る!!

暗がりから現れたのは、物静かで神秘的な暗い感じの男だった。
どこか商人を思わせるその男は開口一番、
「掘り出し物に興味はないかね?」

この魔物と障気が渦巻く世界で商売とは…。何と呑気な…。
そう思いつつ、やっと会えた人間に余もオズワルドもほっとした。

「俺はクィークェグ、どうして欲しい?」

どうして欲しい? か……そうだな、とりあえずこの城の事や周辺を探ってみるとするか。

「コズミック・フォージというのを聞いたことはあるか?」

「それは何のことだ? 聞いたこともない」

ちょっと落胆した。
仕方がないかも知れない。
見るからに商魂たくましい賤しい男だ。
知ってるわけが無い。

「何か面白い話はないか?」

「いかれたフランス野郎が塔に住んでいる! 名はル・モンテス。
船長にお気に入りを取られていかれちまったんだ!」

いかれたフランス野郎…
あの塔にいた、高圧的な男の事か…。


「あのフランス人はイカれてる。船長があいつのお気に入りを取ったんで、あいつは怒って、船長を閉じ込めた」

「お気に入りは何処に?」

「ル・モンテスのお気に入り! 確かスヌープチェリとかなんとか。
フランス人はまだ探してるぜ!」

スヌープチェリか。
その言葉を言えば、あの男は恐らく態度を変えるかも知れない。

「船長とは?」

「『船長のねぐら』のボスだ。かなりやな奴だ。いかれたフランス人が『船長のねぐら』の中に閉じ込めた」

「『船長のねぐら』とは何だ?」

「酷い評判のみすぼらしい巣窟だ。ここから遠くはないが、入るには合言葉がいるぜ」

「合言葉を知っているか?」

「合言葉は教えてやるよ。ただし情報が先だ」

「それは構わぬ。が、情報とは?」

「船長は宝をどこかに埋めちまったんだ! そいつを聞きたいのよ!宝が無ければ合言葉も無しだ! 船長は宝箱を何処に埋めた?」

「知らぬ」

「そうか…ところで、神秘の油は要らないか? 絶対に、損はさせないぞ…」



神秘の油を辞退し、我等は先程の塔へ戻った。
相変わらず扉は固く閉ざされたままだ。

「スヌープチェリとは?」

その言葉を聞いた後の、老人の声のトーンの変わり様は、一種の見物だったであろう。

「スヌープチェリを見つけたのか? 何故それを最初に言わない!! さぁ入った入った!」


背が高く、細身だが、がっしりした体格の男がそこには居た。

「わしはル・モンテスじゃ! この塔に住んでおる。最近塔は陰気になってしまった(ヤレヤレ)。…ところでスヌープチェリを見つけてくれたかね?」

「いや、残念だがまだ見つけてはおらぬ」

「あぁ、どれほど長いこと探し続けていることか!もし彼女を探し出してくれたなら、わしが船長を自由にしてやろう。ただし、スヌープチェリが先じゃ!」

「ところで…コズミック・フォージとはなんだ?」

「それはなんのことだ? 知らない。聞いたこともない」

「スヌープチェリとは何だ?」

「いとしいもの! 彼女は真っ白で大きな黒い鼻と長い耳をしておる! 船長がわしから奪い去った!」

真っ白…
大きな黒い鼻と長い耳…

それは某キャラクターの事では…?


「船長とは?」

「我等の呪われた船の船長。七つの海を渡った最も汚らわしき男!奴は城の地下に閉じ込められてる」


どうやら、クィークェグもル・モンテスも目的の物を渡さない限り情報や何かここから抜け出せるヒントもくれないのだろう。

…まったく、ここの連中は…


その間にも草やネズミ、またごろつき共が我等に襲いかかってくる。
襲撃の度に死にそうになるが、必死にブレスで切り抜ける。

この能力が開花してなければ、生き延びられなかっただろう。

オズワルドの手記

ひとまず陛下と私は一旦休憩した後、城内の探索へと戻った。
北へまっすぐ進んだところ、突き当たりに当たった。
そこには鉄格子があり、「勤務時間中 門の開放は厳禁」という看板まで着いていた。

この場合、どこか手近に扉を開けるモノがあるのだが―
と、ふと陛下が近くの出っ張ったレンガの1つを押された。
その途端埃と共に、鉄格子が開いた。

もしここで鉄格子が降りては大変ということで、陛下は廊下に残ってスイッチを見張られる事となり、私が部屋の中を探る事にした。


部屋の中央は古い骨の破片が辺りに散らばっており、地面には真っ赤なしみが付いている。
その光景は戦場で屍の山を見慣れた私であっても、どこか気味の悪さを感じる。
不自然なほどここだけ骨の破片が多い所為だろうか。

そんななか、私はふとある一つの頭蓋骨が気になった。
調べてみると、砕かれた頭蓋骨の喉の辺りから奇妙な鍵が見つかった。
今際の際に、それを飲み込んだのかもしれない。
鍵の頭には羊の彫刻が施されている。

羊―
古代から“生贄”もしくは“魂”の象徴の動物とされている。
きっとこの鍵は重要なものではないか。

これを陛下に預かっていただくこととした。


薄気味悪い部屋を後にして、南東の塔へと向かった。
南東付近についた時だった。
それほど遠くない辺りから、衣擦れなのか
何かが羽ばたくような音が聞こえてきた。
多分、この城の塔に吹き込む風の仕業だろう、と思ったがそれにしては強い風ではないのだろうか―
そう思い、私たちは塔を駆け上ってみる事にした。

目の前の階段を曲がった向こう側から、何かがぶつかったような音が聞こえる。
やはり何か近くに居る。
さらに我等は、螺旋階段を足早に登った。
前方の階段を駆け上がるガタガタという足音が聞こえる。
階段を登り、塔の最上階まで一気に駆け上がった。
塔の床にはパンの屑が散らばっていた。
そして、穏やかな風に吹き飛ばされていった。
と、突然、右のほうでドアがバタンと閉まった。
ドアの向こうから、なにやらとても奇妙な物音が聞こえてきた。
何かが強く圧迫されながら、深く呼吸するような音だった。
ドアの向こう側から奇妙な声が聞こえた。
そのイントネーションは、グランクール(読者の世界で言うならばフランスと言うらしいが)風の独特なものだった。

「どっかへ行っちまえ!」

その高圧的な物言いに黙っている我等ではない。

「貴様、この城に住んでいる者なのか!?」

陛下の問いに無礼にもその男は答える事なく怒鳴り続けている。

「わしは、『どっかへ行っちまえ』って言ってるんだ。
お前さんが誰であろうと、わしは出て行かん! 
ここから動かすことは出来んぞ!」


「何…」

どうやら相手も相当頑固らしい。

こんな石頭を相手にする位ならば、さっさと立ち去るべき、と陛下は判断なさった。

塔のバルコニーの様な部分に出てみる。
東のほうには、寒くて陰鬱で、邪悪なものたちの住処との間を隔てる沼が広がっている。
やはり、悪魔や魔女などの伝説は、ただの噂話というわけではないのだろうな、と陛下は仰有られた。

階段を降りる際、いきなりネズミの大群に襲われた。
薄汚く、一般のネズミよりも巨大で炯々と目を赤く光らせるネズミたちを見たら、どんな勇敢な男でも総毛立つだろう…。

不気味な泣き声を発しながら、奴らは私の足や陛下に飛び掛かってきた。



何とか全滅させた時、すっかり私たちは息が上がっていた。
陛下曰く「ここに居る者はどれも障気の影響を受けて、一般の世界にいるそれとは比べ者にならない位凶悪化している」
そして、ネズミ一匹倒すのに我等が苦労するのはそのせいであって、決して我等が弱くなったわけではない、とも。

確かにそうだ。

あんな巨大な体をしたネズミはラーナはおろか、グランクールにもエスタニアにもおるまい。


もしかしたら、我等もここに長居をするべきではないのだろう。
障気を吸いすぎて正気を失ってしまったら、どうなってしまうのだろう。
そんな不安が頭を過ぎったが、今はネズミとの戦いで疲労した身体に鋭気を養う事しか出来ぬだろう。

フランソワの日記

002


兄さんと姉さんと合流出来たのは、不幸中の幸いだった。
無論、兄さんが喜んで私の合流を歓迎したわけでないのは百も承知だ。
だが昔のように―まだ幼い時、兄さん(無論あの当時から嫌がられたが)の後をついていって姉さんと3人で近くの森を探険したような、あの日々に似たものがあって私はとても嬉しい。


ところで、この城にはいくつか塔があるのだが―

その1つに住んでいる奇妙な―細いが背の高い、がっしりとした体つき(何だか矛盾してるような気がする…)の老人、ル・モンテスから「スヌープチェリ」という…何か宝物を探して欲しいと言われた。

何でも前にも拾ってくれた者がいたらしいが、また無くしてしまったのだという。
その前に拾ってきた者たちについては、心当たりがある。

黒甲冑の男―
それを聞いて私も兄さんも顔を合わせた。


…ラーナのオズワルド…


どうやら、向こうのパーティーは二人だけという情報をル・モンテスから聞きだした後、私たちは再び城の探索に戻った。


どうやら、ラーナのパーティーと私たち以外に何人かの人間がこの城にはいるらしい。
その一団と出会った。

いかにも汚らわしい山賊・盗賊・追い剥ぎの類だ。
髭と髪を伸ばし放題にしたその容姿は見るからに不潔そのもので、下卑た笑い声を立てている。
城の障気に耐えられずに気が触れたのだろうか。
彼等は私たちを見るなり、ぎらりと目を光らせて剣を振り回して襲いかかってきたのだ。

全部で9人―

私や兄さんがいかに筆頭騎士で、姉さんも猛将であったとしても―
あまりにも分が悪い。

「ここは一旦引こう!」

「何だと!!怖じ気づいたか、フランソワ!」

兄さんはそう言うが―

「いいや、逃げた方がいい!!」

姉さんは私に同意してくれた。

「何だと!テレジア、貴様もこの馬鹿弟の臆病風に当たったのか!」

「そうじゃない!! 兄上の体力が無さすぎるんだ!」

そう言うなり、私と姉さんは兄さんの両腕をそれぞれ抱えて猛ダッシュした。
相手は追いすがろうとしたが、それをも振り切った。

だが、ただではすまなかった。

相手の投げた投剣ダークが―兄さんの左脇腹に深々と刺さったのだ。
思わぬ深手に兄さんはよろめくが、私たちが両腕を持っていたおかげで何とか一緒に逃げおおせた。





「どういうことなんだ、これは!!」


HP覧を見て、兄さんは愕然とした。
私と姉さんは10以上あるのに、兄さんはたったの5しか無かったのだ!

どうやら、キャラメイキングの時に、HPにあまり数値がいかなかったのだろう。
(その代わり力と生命力は私たちパーティーでは一番だ)


「…下手をしたらクリーピング・バイン(つるくさの魔物。ちなみにウィザードリィ6の最弱モンスター)にも負けるやも知れませんな」

姉さんが気の毒そうに兄さんを見る。

「まあ兄さん。レベルアップしたらHPも大幅に増えるだろうし」

「…」


***
実話です。
フェルディナントのHPの低さに呆然としました。
無事、このパーティー、クリア出来るかしら…(どきどき)



フェルディナントの日記より

001
ラーナが秘密裏に「コズミック・フォージ」と呼ばれる秘宝を手に入れるために乗り出したという。
それを聞いた俺は直ぐさま妹(テレジア)を連れて、アラム城へと乗り込んだ。

そこまでは良かった。

だが、この城に降り掛かった“災い”は俺たちの上にも降り掛かった。
それは、入り口であり、出口である城門がいきなり閉まったきり二度と動かなくなった事ではない。



「…何故貴様がここにいる」


城には先客がいた。
あの忌々しい顔―何を見間違えても、こいつの顔だけは忘れない。
否、忘れようとしていてもこいつはいつも肝心な時に現れて俺の邪魔をする。
縁を切ったはずなのに、逆にしつこく月回れるとは皮肉なものだ。

「ははは、兄さんの考える事ぐらい分かるさ」

女共がいたら、さぞかし「きゃー♪」と奇声を上げたであろう笑みを浮かべる。

「一体何の目的でここにいる…」

剣呑な俺の眼光を見ても、こいつは一向に怯まない。
馴れてない奴が見たら、失禁するほどの鬼気迫る表情を浮かべても、逆に弟はそれを楽しんでいるかのようだ。
それがますます俺の神経に障る。

「兄さんと同じさ。敵国に秘宝を渡さない様に先回りしたんだ」

「だが、閉じこめられては意味が無いな。悪いが、お前はここで死んで俺たちはここから生きて帰る」

「どうやって? 唯一の出口は塞がれ、魔の障気漂う迷路が前にある以上、ここでお互い殺し合いを演じても意味が無い―そうだろう、姉さん」

ここまで俺たちの動向を見守っていたテレジアは、突然意見を求められても狼狽することはなかった(さすが俺の妹だけの事はある)

しかし…
こいつは昔からそうだ。
何かあると、すぐにテレジアの意見を何とか自分のイイ方に持っていこうとする。

「…残念だが、兄上。フランソワの言うとおりだ」

何!

「得体の知れないこの迷宮を全員で生きて出られるのが優先すべきではないか?それに、ここでフランソワと一騎討ちして下手に体力を削ったら、この城から脱出する際に負担になる」


…。
腸が煮えくりかえりそうだが、テレジアの言うとおりだ…。

得体の知れない何かがここにはある。
さすがの俺も、ちょっと不安はある。
それに先行したラーナの動向も気になる。

呉越同舟―
そんな言葉が俺の胸に去来した。


何よりも腹立たしいのは―

どういうわけか、こいつが物凄く嬉しそうな―楽しそうな顔をしていることだ。
何がそんなに嬉しいんだ。

―皇帝フリードルム2世の手記―

玄関ホールを抜けると、巨大な広間に出た。
陰鬱さと静寂がこの部屋の主だった。
我等が入るまでは―

だが、どうやらここには我々以外の人間がいる事も確からしい事に気付いた。
広間の巨大なシャンデリアや蝋燭台には火が点っている。
恐らく、今我等が置かれているのと同じ境遇に陥ってる者がいるのも確かなのだろう。

ふと何と無しに近くの小棚を見てみると、宝箱があった。
曰くありげなそれの埃を取ると、金属面に「これを最初に開けよ」という文字が彫り込まれている。
最初。ということは、少なくとももう1つあるのだろう。

そのもう一つは、ちょうどその小棚の反対側にある棚にあった。
それには「これを二番目に開けよ」とあった。

どういうわけだか、逆の手順で開く事にした。
つまり、最初に「二番目」の箱を開けたのだ。
城にある物―それも曰くありげな城にあるものなのだから、罠に十分注意したが、幸いな事に罠は仕掛けられていなかった。

中には杖といくつかの金貨、そして巻物があった。
それには「けっして あきらめぬこと」と記されている。

これを置いたのはいかなる人物で、どういう意図があってこうしたのかは分からぬ。
だが、閉じこめられ、ある種の絶望に近い境遇に置かれている身としてはわずかな救いのように思えた。

もう一方も空けてみると、「ひとたびの治療を二度、回復を三度、汝に一つの命、与えること七度」という巻物といくつかの治療薬があった。
見てみれば、傷薬の他、毒消しや深い症状を治す軟膏みたいな物まで揃っていた。そして、「いのちのまよけ」と言われている飾りまで見つけた。

杖は余が装備する事とした。
魔力が込められているこの杖は、いざとなったら役に立つかも知れない。


そのいざ、という時が早速やってきた。

いきなり背後から、不気味な、何かがうねる音が聞こえた。
振り向くと、動き回る蔓草が数本こちらに向かっていた。
明らかに、それは意思を持っていた。
侵入者たる我等を迎え撃つと言う、きわめて攻撃的な―

「たかが草だ。こんなもの…」

踏みつぶす程度、と思っていたのだが意外にもしぶとかった。
否、信じられないかも知れないが一瞬、余は「死」を覚悟した。

蔓草は鞭のようにしなり―その癖、下手な剣よりも鋭い葉でこちらの足や胴にからみつき、または貫こうとするのだ。
その一撃一撃自体は非常に弱いが、いかんせん数が多い―
みれば、9体ほどいる―
しかもどういうわけか、余の攻撃はおろかオズワルドの渾身の一撃ですらまったく効果がなかった。


「陛下、ここは私が相手をします!どうか御隠れ下さい!」

そう言われ、余は近くの物陰に身を潜めた。
どんなに凶悪な魔物出会っても、所詮は植物―
急に消えた余を見つけだせるわけがない。
ちょうどオズワルドも近くの物陰に身を潜めた。

ここから、やっと我等がまともに攻撃出来る。

一体いつからこんな能力が開花されたのか、余もオズワルドも強酸のブレスを吐けるようになっていた。
それで一網打尽だった。

だが…
気付いたことがある。
ブレスを吐いた後、ひどく疲労感と倦怠感を覚える。

下手に今動き回ったら自殺行為だ。
そういうわけで、二人して近くの―安全そうな小部屋を何とか見つけだして閂をし、そのまま丸太ん棒の様に眠りこけた。
草刈りごときでこんな疲労と苦戦をするなんて…
ある意味では落ち込んだが…

ともかく、今は身体を休めるのが先決だ―

―皇帝フリードルム2世の手記―


それは偶然の事だった。
オズワルドと二人で鷹狩りをして、珍しく森の奥まで偶々入った時だった。
今までに見慣れない道があったのを訝しく思い、突き進むと突如古城が現れた。

高くそびえる無数の尖塔―
神秘的でありながら禍々しさを覚える彫刻―
それは、幼い頃乳母から聞かされた「アラム城」そのものだった―

それは今より100と20年前の事―
さる邪悪な王が、これまた邪悪な魔法使いと手を組み、魔神から聞いた「書いた物を全て現実に起こす」魔法のペン、「コズミックフォージ」を手に入れたという―
しかし、そのペンを巡って王と魔法使いは対立し、戦ったという―
それが知られている事の全てだった。

目の前の古城がとっくに無人になっているのは火を見るより明らかだ。


どうする。
下らない昔話であっても、万が一その魔筆があるならば―
それを使えば―
リグリアの西部はおろか、忌々しい蛮族ども、そして法王ですら余の足下にひれ伏す―

だが、周囲の者は信じてくれるだろうか。
特にラスロー。
鼻先で笑っておまけにデコピンまで喰らいそうな現実味のない話だ。
余以上のリアリストであるあやつが、探索隊を出す事にはしぶるであろう。

とりあえず、オズワルドに一旦入ってみるか、という提案をしてみた。

「仰せのままに…」

だが、どこかオズワルドは躊躇いの色を隠し切れていない。
無理もない。
何か―邪悪な何かがあるような気がするのだ。

「なに、もしあまりにも危険なら、この城門を潜り抜けて外へ逃げればよいのだ」



馬を近くの樹につなぎ、最低限の持ち物を持って我等は城門をくぐった。
(最初から門は開きっぱなしだったのだ)



だが…


「陛下!」

オズワルドの緊迫した声と同時に、城門が重々しい音を立ててガチャリと閉まったのだ。
先程まで永遠に動かないかの様に静止していたはずの鉄格子の門―
外界と魔界を繋ぐ門は閉ざされたのだ。

…どうやら、「危なくなったら逃げる」わけにはいかなくなったようだ。

二人で必死に門を開こうと試行錯誤したものの、門はビクリとも動かない。
仕方なしに城の玄関ホールへと進んだ。
変わったものは特に無く、厚い埃が床一面を覆っていた。
廊下の遥か彼方から、何かが動き回る微かな物音が聞こえてくる。
ここでは自分達こそが侵入者なのだ、ということを思い出した。


不気味な静寂に居たたまれなくなり「ひとまず進むぞ」と余が言い出すまで、オズワルドは動かなかった。
何かの気配をオズワルドは探っていたらしい。


この城から何としてでも生きて出る―

まずはその事だけを念頭に、我等は玄関の先へと進んだ―
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