死者の殿堂に、何故だか余は行きたくなった。
本来なら、ここから即行立ち去るべきなのだが、真実を探求したい―否、知らなくてはこの城一帯から出られないのだ。
凍り付くような恐怖を抱いているのに、何故そういう事が出来るのか分からぬが、余もオズワルドも地下へ続く螺旋階段を降りていった。
響くのは我々の足音だけ―
それなのに、何か聞こえたような気がする…
殿堂は、大きな回廊になっていた。
そして、一定間隔に玄室が左右に配備されている。
否、玄室というよりは柩の間である。
かつて、この城の重鎮たちの墓なのであろうか―
しばらく歩みを進めた時だった。
突然、天井から巨大な岩が落ちてきた!
何とか避けたものの、余もオズワルドも頭部に傷を負った。
「けがらわしきものに死を!」
突然、石を敷き詰めている床にひびが入り、大きな穴から腐りきった人間の死体が現れた。
奴らの動きは、これまで相手にしてきた動く死体たちよりも遙かに素早い。
まるで踊っているように動くのだが、その度に腐肉がずるりずるりと落ちているのを目の当たりにしては、夢に出てきそうだ。
「ディスペルアンデッド!」
何とか、退散させたものの、視覚的・精神的ダメージが大きい…。
しばらく進むと、今度はぶきみな光が余とオズワルドに降り注いだ…
「おろかな侵入者め!」
何やつ…
声を上げようとしたが、あの光のせいか、声が出なくなってしまった。
沈黙させられてしまったのだ。
これでは、「ディスペルアンデッド」が詠唱できぬ。
奴ら、これを狙っておったのか…。
目の前に現れたのは、邪悪な亡霊ゴーストリイ・シー・ハグだ―
生前から、人を誘い込んで喰らっていた連中だ。
奸智でも知られる奴らだが、オズワルドの敵ではなかったようだ。
あらかじめ、エンチャンテッドブレード(武器に魔力を付与する魔法だ。これならば、実体を持たぬ霊や妖しどもでも斬り捨てられる)を互いの武器に施していたのだ。
さらに進むと…悪魔の風が通路を吹き抜けた!
『たあああちいいいいさああああれええええ』
身の毛がよだつとはこういう事なのだろうか。
周囲は墓場と死者のみ。
そして、怨霊の類が跋扈する暗闇の宮殿。
余は…我々は
生きて戻れるのだろうか…
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