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わたしは自分がなにを感じ―なにを考え-ているかを書いてみたいと思う(キケロ)
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とりあえず、漁るだけ漁った後、さっさと俺たちはこの陰気な場所から立ち去る事にした。
長居していれば、また亡霊に襲われる危険があるからだ。

出て気付いたが、この地下大墓地に通じる大広間には魔法の泉が涌いていた。
言うまでもなく、全員がぶ飲みした。
何だか分からないが、時々この手の飲み物があるのだ。
時々毒(というか、ただ単に腹をこわしただけと思われるが)があるので、不用心に飲む事は出来ないんだが…

ともかく飲んだ後、俺たち全員生気が戻ったような感覚になった。
もっとも、お腹がたぷんたぷんしてちょっとつらいが。

亡者の島の牢獄みたいな場所の門の外の水面には、大きな板で作られたいかだが浮かんでいた。
そして、丈夫そうな鋼鉄製のケーブルが壁から伸びて、いかだのクランク付き巻き上げ機につながっていた。

カロンの爺に頼んでもどうせいつものルートしか行かせないのは目に見えている。
多分前進するには、このいかだを動かすしか無い。
いかだに乗り、ケーブルを引き出すようにクランクを回すと、いかだはゆっくりと下流に向かって動き始めた…


下流に向かってる最中、俺たちの前に、不気味な影が水中に浮かびつつあった。

「こいつは…」

一見すると大蛇みたいな形だが、泳ぎが滅法うまい。
否、大蛇だ。
シーサーペントだ!

と突然、いかだの後方から派手な水しぶきと共にいかだが揺れ始めた。

「私たちを水中に引き込む気だ!」

フランソワが言うまでもなく、シーサーペントはいかだを大破させようと尻尾でいかだを煽りだしている。
勿論、俺たちが水中で戦える訳が無い。
かといって、引き揚げて何とか出来る相手ではない。
もっとも、狭いいかだの上に引き揚げるなんて出来ないのは言うまでも無い。

「ちっきしょう!!何とか近くの岩場までいければ…」

だが、近くには岩場が無い。
否、周辺にはうっすらと霧がかかっているために視界が効かない。
それだけに絶望的な状態だ…


「こうなれば一か八かだ…」

テレジアが静かに呪文を詠唱し出している。
大揺れしていて、時折シーサーペントの尾が叩きつけているというのに…大した女だよ、お前は…

その途端、いきなりシーサーペントが悶え始めたような動きを示したかと思うと…
襲撃は止んだ。
同時に、シーサーペントが水際に浮かんできた。
全長10メートルほどはあろうかという巨体はまったく生気が感じられない。

「…デス・ウィッシュ(脱魂)が効いたな…」

デス・ウィッシュ…
死神を召還し、敵対する全ての魂を運び去らせる、古代の禁術の一つだ。
万が一、術者の力量不足の場合、死神は術者を標的にする場合もあるという物騒極まり無い呪文だ。
…いつの間に、お前そんな物騒な呪文を覚えたんだ…(汗)


「転職を繰り返しまくったら、覚えてしまったのだ。あらかたの呪文はもう自分もフランソワも覚えてるぞ」



何!?


俺は全然きいてないぞ!!


「多分、兄上は物理攻撃専門員にしたんじゃないのか? 呪文をバンバン使うよりも、クリティカル攻撃で致命傷を与えまくる方が性に合っているんだし」


…プレイヤーめ!!
俺を育てるのを怠りおって!!


なんだかんだ言ってる間に、いかだは静かに目的地であろう岩まで辿り着いた。
そこには看板で

「サイレンの入り江 船乗りは警戒せよ!」


とあった。
入り江はとても静かで
だれもいないようだった…


「助かったな、さっさとここから逃げた方がいいな」

サイレン―
確か、船乗り達を発狂させる歌を奏でる魔物らしい。
一匹や二匹でもやばいというのに、ここら辺は信じられない程の群で襲ってくるらしい。
危険過ぎる。
さっさと逃げよう、と俺が言いかけた時だった。


「遅すぎたようだな、兄さん…」

珍しくあのフランソワの顔に余裕や落ち着きが無くなっている。

突然、何者かにまわりを囲まれてしまっていたのだ!

水底の奥深くから、水しぶきと共に怒濤のように数多くの肉体がせりあがってきた。
半分が女性で、半分が魚という姿のその生き物は、まるで生まれてからずっと海中でくらしてきたかのごとく、やすやすとそして、しなやかに水の中を動き回った。

いかだのたどり着いた岩は、彼女たちに完全に取り囲まれてしまった。


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