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わたしは自分がなにを感じ―なにを考え-ているかを書いてみたいと思う(キケロ)
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皇帝フリードルムの日記

アラム城の一階にある中央ホールの水のみ場近くにある右側の階段を上り、鍵を使って鉄格子を開いた。

確か、この辺り、最初に来たとき、何か風の音、否何かの泣き声のような音を聞いた場所だ。
やはりあれは余の気のせいではない!
あれは、何かの―否、牧師の泣き声なのだ。

この塔には牧師の霊、それは解放しなくてはいけない。
何故かそう思い余はスペードの鍵を使い最上階の扉を開いた。

部屋は空虚で静まり返っていた。
恐らく100年以上もの間、ここには誰も入ったことがないのだろう。
部屋を眺め回していると、
なにやら奇妙な光が部屋の中央に集まり、人型を形作り始めた。
程なくして、年老いてしなびた顔が見分けられるようになると、
それは話し始めた。

「ハロー? ハロー?? アニー、君かい?
見えないんだ、アニー……アニー、聞こえるかい? アニー?
アニー、どうして答えてくれないんだい?
私を忘れてしまったのかい? アニー、覚えていないのかい?
私が誰なのか、覚えていないのかい?」

その亡霊の異様な雰囲気に余もオズワルドもたじろぎそうになった。
辺りの空気も重く、冷たい。

「私は……私は誰なんだろう……
覚えている……そうだ忘れないぞ、
ずっと昔、私は……聖なる職に就いていた。
信心深く、人々から崇められる者だった。
私は覚えていない……いや、覚えているぞ! 
アニー、愛しいアニー、
ああ、アニー! 私達は道を誤った!
私は君との神聖な誓いを破った! 
愛しいアニー、私は罰を受けた! 
罰を受けたのだ……
私達の娘! この娘をどこかに隠さなければ……
奴等がやってきて、この娘を連れ去ってしまう!
やめてくれ! その娘は悪魔なのだ! 
彼女は罪によって齎された……
アニー、私達の罪のせいなのだ!
この娘は呪われている! 
そして我等もまた呪われている
……ああ、愛しのアニー……
王様に見つかった! 
王があの娘を連れて行ってしまう!
だが彼ならあの娘を守ってくれる……
アニー、彼なら我等も守ってくれる……
遠い遠い昔だ……
アニー、もはや私は居ない……
だが角笛は持っているぞ! 
忘れはしない、首の周りの寒気…
…そして光……
私は光に向かって歩いていた…
…ああ、それなのに、何かが私を引き戻す!
何かが、私が光へ進むのを邪魔している…
…手だ! 
光から伸びた手が私に何かを持ってきてくれた……
角笛だ! 

もう時間かい? 
アニー、もう時間なのかい? 
角笛を吹くときなのだね?
アニー、今行くよ! 
さぁ、これから角笛を吹くよ!」

亡霊は暗い色の角笛を持ち吹き鳴らした。

「アニー、光が見えるよ! 私のために光が戻ってきた!
サヨナラアニー、これから光のほうへ行くよ……」

亡霊は消滅し、暗い色の角笛が大きな音を立てて床に転がった。

あまりの事に、余もオズワルドも呆然とした。
その角笛が落ちる音がするまでは―

気の触れた牧師の霊はこれで、昇天したのだろう。

しかし…
ゾーフィタス




とりあえず、余はこの角笛を拾う事にした。
何故だか、後で必要になるような気がしたためだ。
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