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わたしは自分がなにを感じ―なにを考え-ているかを書いてみたいと思う(キケロ)
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階段を上った先は、少し大きな広場になっていた。

そこは、一種の王者の間だったのであろう。
わらを編んで作られた玉座に、険しい表情で警戒心も露な少女が座っていた。
彼女は風変わりな頭飾りをつけ、小さな骨とビーズ玉で出来たネックレスをいくつも首に巻いている。
そのすぐ横では、数名の女戦士が大きな団扇で彼女を扇いでいた。
そして、大きな気味の悪い仮面をつけた別の女が、彼女の右後ろから此方をじっと見つめていた。

「私はアマズールの女王! 我等の聖地に来たのは誰だ? 石を取りに来たのか?」

はいそうです、と誰が答えるものか。
石を取りに来たと言えば、こやつらは一斉に取り押さえるであろう。
仕方がない。

「そうか。ならば貢ぎ物を私の前に置け!」




このアマ、いい根性してやがる!

一瞬俺が気色ばんだのをみて、テレジアとフランソワが前に出て、これまでに拾ってきた武器を差し出した。

「これは、我が国最強の弓でございます」

…アラム城で拾って以来、「これいらないけど一応持ってくか」と合切袋の中でスペースをとっていた、いらないものだった。

それを受け取るなり、女王は後ろを振り向いて仮面の女に囁いた。

「言ったとおりだろ? 根性無しだってわかってたのさ!」



その根性叩き直してや…

俺が思わず武器を取りそうになったのをテレジアが力尽くで止めている間にフランソワが前に出て、何やら口上を述べている。
あー、あいつは女の扱いだけは得意みたいだからな。

「わたしはアマズールの女王!
わらわはマウムームーの寺院を治めておる」

「アマズールとは?」

フランソワの問いに、女王は誇らしげな表情を浮かべる。

「我等は寺院の守護者!
我等マウムームーの寺院を護る!」

寺院はどうやらマウムームーを祭っているものらしい。
それもこの広間の裏に存在しているようだ。

「マウムームーは岩の守護者!炎の道を行け!
炎の池の中に住まわれておる!」

そのやり取り後だった。
気味の悪い仮面の少女が近づいてきて囁いた。

「シーッ! 取引しない?
私はクワリクボナ。マウムームーの司祭よ。
私達この寺院に住んでるの」

意外にも友好的な少女を前にし多少戸惑ったが、その色気たっぷりの格好はたまらなかった。
先程のアマズールの女王とは大違いだ。

「マウムームーとはなんだ?」

「シーッ! マウムームーに聞こえてしまうわ! 
マウムームーは炎の池に住んでるの!」

「取引? 何をするんだ?」

「私はあなたの味方よ。役に立つものを持っているわ!」

「そうか。ところで、コズミック・フォージというのは?」

「それは何のこと? 知らないわ」

「あの女王は一体なんだ?」

「女王は下着を着けてないの!」

「なんだって!?」

俺はおろか、フランソワまでも先程の女王のいた方を見つめてしまった。

「シーッ! 後ろにいるわよ!
ともかく取引しない?」

この女の意図が分かりかねたため、俺は思わず「マインドリード」でこの女の心を覗いた。


―素敵

「君も素敵だよ」

咄嗟にそんな言葉を言ってしまった。

すると、クワリ・クボナは仮面をそっと取った。
下から現れたのは、どぎつい化粧をしているかかなりの美しい顔だった。
目はいたずらっぽく―そして挑発的な輝きを放っていた。

いける!
女っ気が無く、ひたすら泥と岩の中をウロウロしていたんだ。
たまにはこういう事も無くてはな。

「ねえ…一緒に燃えてみない?」


何!!

この女! 俺を誘うとはいい度胸をしている。

後ろから、冷たい、軽蔑しきったような視線が二つほど刺さってくるがそんな事を気にする俺ではない。

「無論だ」

「ならば証を立てて」

「証?」

「そう!炎の道を歩いて!それが証よ」



…どうやら、マウムームーに会って来ないとダメらしい。
ふん。
ならばさっさと倒してやろうではないか。

「いいだろう。歩いていこうではないか」

そこでクワリ・クボナが売ってくれている足の粉を買う事にした。
代わりに彼女が欲しそうにしていたマウムームー像を与えた。
後はさっさとマウムームーに会って…
ふ。
ひさびさに楽しい夜が過ごせそうだ。

「熱くなってるやつには気を付けて」

「ふ…待っておれよ」

俺だけでなく、この女も嬉しそうに―熱い夜を楽しみにしているようだ。

ならばさっさと終わらせよう。

奥に進んでみると、前方には煙を噴き上げる噴火口が待ち受けていた。
熱い石炭の層が火山の淵まで端のように続いており、ピラミッドから反対側へ渡る唯一の道となっていた。

先ほど購入した足の粉というものを革の靴の裏へ丹念に振りかけて塗ってみた。
そして半信半疑、恐る恐る石炭の道へ足を踏み入れてみた。

石炭は真っ赤になるほど熱くなっていたが、足には熱さも痛みも感じられなかった。
石炭の橋は、熱く煮えたぎった溶岩の上を渡って、直接火山口まで通じている。
溶岩の上に立つと、火山から伝わる地響きが感じられた。それはまるで今にも噴火すると言わんばかりであった。
振動は次第次第に激しくなっていった。
足元の溶岩が煮え立ち始め、突然火山が噴火した。
噴火した溶岩からは魔神のような姿が見え、そこから声が響いた。

「お前が石を取りにきたというのなら、わしが成敗してくれよう!」


…まだ何も言ってないんだがな。
何という短絡的な魔物なんだ。
つーか、ジャイアントマウンテンにいたロック・ガーディアンみたいなパチモンな魔物ではないか。
こんなモノをありがたがっていたのか、アマズールの女どもは。
…どうせゾーフィタスが作ったものなんだろう。

言うまでもないが、勝負はあっさりとついた。
全員でディープフリーズを連続で唱えたのだから当然だ。
そして、ロック・ガーディアンが持っていたものと同じ赤い宝玉を手に入れる事が出来た。

「ふ…証は立てた。待ってろよ、クワリ・クボナ。俺ので熱く燃え上がらせてやるぜ」


「何言ってるんだろうね、兄さん」

「…」

もはやテレジアとフランソワの言う事など聞く気は無かった。
だが…


「そういえば、姉さん、ここに来る途中大量のゾンビが襲ってきたのを覚えているか?」

「ああ。アマズールゾンビだろう? しかし男みたいな死体ばかりだった気がする…」

「気じゃなくて、男しかいなかったんだ。哀れな種馬の馴れ果てがあれだ」

「何」

「思い出したんだ、姉さん。確か、アマズールは気に入った男を見つけると死ぬまでひたすらアマズールの女の奴隷にされるんだ。彼女たちの優秀な娘を産ませるためにね。…男の子だった場合は殺されるという、蛮習だな」


待て!!
まさか、俺はその種馬にされる所だったのか。

「考えれば分かるだろう、兄さん。あのやり手の女宰相が、兄さんが格好いいからってほいほい部屋に招くと思うかい?」

危ねーー…


言うまでもなく、俺達は「巡礼してきた。もう帰る」と言ってさっさと出ていった。
クワリ・クボナが「そう?残念ね。気がむいたらまたいらっしゃいね」と色目を使ってきた…。

種馬も幸せかも知れないと思いつつ、あのゾンビたちを思うとぞっとする。

さっさとここから抜け出して、あの髑髏の扉まで戻ろう。



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