気付けば、夢中で余は洞窟の中に迷い込んでいた。
雄牛の仮面を付けた野蛮な戦士どもからは逃れられたものの、
奇怪な洞窟に逃げ込んだ事を後悔した。
得体の知れない何かがいるのを肌で感じたからだ。
何とか目を凝らして進んでいくと
その岩だなを切り開いて作られた壁面を
またたく炎の光がてらしていた。
何かが起きるのではないかと思いながら
洞窟に入ったが、何事も起こらなかった…
ふと、冷たい空気を感じ後ろを見ると―
突然、幽霊があらわれた!
女の亡霊だが、邪気は感じられない。
手には聖なるハーブであるヒソプを握りしめ、片手には何か
巫女の使う聖なる器具が握られているのがまたたく松明で
何とか見えた。
その亡霊は
「おぉまぁえぇはぁだぁれぇだぁぁ??」
と突然誰何してきた。
「余は神聖ラーナ帝国の皇帝だ」
と名乗ったものの、正しい答えでは無かったようだ。
「たぁちぃさぁれぇぇ!!」と不気味な声とエコーを残し、
幽霊は消え去った…。
…どうすればよいのだ。
オズワルドと二手に別れたのは失敗だったと思う。
洞窟の中には無限のゴブリンどもがひしめいていた。
所詮雑魚は雑魚なのだが、その数の多さはいただけない。
奇声をあげながら、久々の犠牲者に襲いかかる奴らの凶暴性は
あの狂気の雄羊の戦士にも劣らない。
何とか退けたものの、魔法の森は恐ろしいまでに入り組んでいた。
それだけではない。
城一つ分軽く超えるような、巨大な蜥蜴が闊歩しているのだ。
あまりの巨大さに思わず見入ってしまったが、
万が一あれに襲われればひとたまりも無い。
こちらの手持ちの魔法―
たとえば、酸素を全て奪い、窒息死させる「アスフィシエクション」が有効であれば良いのだが…。
幸い奴らに見つかる事はなかったものの、途方に暮れた。
これからどうすれば良いのだ?
あの災いの王は我らを捕らえ、あの雄羊の寺院の中に監禁した。
さらにこの魔法の森は、正気の者を狂わせ
取り込もうとしている。
何とかオズワルドと合流出来ればよいのだが…。
途方に暮れ、ひたすら余は森をさまよった…
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