気付いた時、我々は牢屋に閉じこめられていた。
鉄格子の向こうに、人影がいるのが見える。
一目見なくとも、それが味方である訳が無かった。
いつまでもここにいる気は毛頭無い。
門の向こう側に立っている守衛が
こちらをじっと監視している…
「おい、オマエ! 」
「何してんだかしらねぇが、
とにかくやめな! 」
監守どもは、全て頭に雄羊の面を着け、鈍い色に輝く鎧と幅広の蛮刀をひっさげている。
…ふと、余は持っていた雄羊の短刀の事を思い出した。
相当、王とレベッカは慌てていたのか、それとも手下どもが相当間が抜けていたのか…。
主立った装備品は残っていたままだった。
勿論、短刀も。
短刀の飾りと、奴らの仮面は同じ―
それに気付いた途端―
「おい!
オメェはそれを持ってねえはずだぁ!
どっから盗ってきた、エ?
ほかにどうしてオメェが
持ってるはずがある?
守衛!!」
監守たちがいきなり牢を空けて殺到してきた。
これはチャンスだ!!
オズワルドと余は思う存分奴らを叩きのめし、一気に牢から飛び出し、無我夢中で外を目掛けて走り出した。
運良く、我々は地下牢から抜け出す事が出来た。
牢から出ると、そこはどうやら城の北側だった。
近くに、何か立派な―恐らく外側からみれば大聖堂のような入り口が見えたのだ。
そこには、次のような文章が刻まれた碑石があった。
「雄羊の寺院 会員のみ」
「おい!そこを動くな!どうして外にいるんだ?守衛!!!」
…どうやら先程の監守の仲間たちが外にいるらしい。
数を見ると、厄介だ。
20数人の、雄羊の仮面を付けた守衛―ラム・ガーディアンが、堂内から殺到してくるのが見えた。
選択の余地は無い。
一旦ここを離れるぞ、と余は言い、オズワルドに目配せで合図した。
つまり―
二手に別れて逃げるぞ!と。
…後で考えれば、これが大失敗だったかも知れない。
王妃の話を思い出した。
「彼は城の北に暗黒の寺院を建立し、
そのシンボルとして雄羊の印を用いた」
そして、北側は「魔法の森」という、迷いの森が広がっている事を。
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