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わたしは自分がなにを感じ―なにを考え-ているかを書いてみたいと思う(キケロ)
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『死者の殿堂』の最奥に、悪魔の娘の部屋―墓があった。


「子の墓
アラムの娘 暗黒のプリンセス」



小さな地下室に置かれた黒いひつぎの
ふたは開いており、真新しい香水と
ライラックの香りがただよっていた。
そして、彼女がそこにいた…

美しい少女だった。
病的なまでに白い肌と、背中に巨大な蝙蝠の翼がなければ、
悪魔の娘だとは分からない程だった。
その顔立ちは、邪悪さをあまり感じさせない―むしろ、普通の少女そのものだった。

彼女は我々を一瞥した後、無邪気に問いかけてきた。

「わたしのこと、ご存知?」

「知っている」

「わたしの名前、知ってる?」

「レベッカ…であろう?」

それを聞いて、彼女は微笑を浮かべた。

「あのヒトが、あなたたちが来るって言ってたわ…
あのヒト、あなたたちがわたしを殺そうとするって…」

思い切ったように、レベッカは問うてきた。

「わたしを殺すの?」

しばらくの間、空気が張り詰めた。
娘の警戒するような眼差しは、陛下の次の返答を聞くまで我々に向けられていた。

「…確かにお前は悪魔の血を引いている。
しかし、我々の目的はその方らを殺すのではなく
ここからの脱出だ。そんな事はせぬ」

「あなたたちのこと、信じていいのかしら…
もしかすると、あなたたち賢いのね…」

その満面に浮かべた微笑みをみると、王妃が嫉妬したというのも分かるような気がした。

「ついて来てくれる?」

その答えを陛下も私も言う事は出来なかった。
いきなり、レベッカがこちらを、にらみつけたのだ!

「ついて来て…」

催眠術をかけられた陛下と私の…

足が勝手に…

先程の王の墓へ…むいて…



部屋の中には、先程の“災いの王”がいた。

「またお会いするとは…哀れな…
君たちにも、多少は知恵というものがあるのではないかと
期待していたのだよ。
どうしてもこうもおろか者が多いのか…」

何という言い様だ…。


「さて…
私は多少のどが乾いているので、君たちの、そのみずみずしい首から、
ほんの少しいただくよ。
なに、渇きをいやすだけだよ…」


彼はゆっくり、牙をむきながら近付いてきた。
しかし、だれもその場を動くことはできなかった。
悪魔の娘、レベッカの催眠術によって、動きを封じられていたのだ…

制止も呪いの声も出せなかった。

ただ、陛下と自分の首に深々と牙を突き立てられ、血と共に精気と生命力を吸い取られるのを見つめる事しか出来なかった。

血を大量に吸い取られたのだろうか…

朦朧とする頭に、“王”の声が響く…


「アーーーァ!
生き返った!
とはいえ、君たちをどうするかという問題がまだ残っている…
レベッカ!」

ほんの少しためらった後、娘は彼の耳元で何ごとかささやいた。

何を言っているのか、さっぱり私は聞き取れなかった。
だが、ロクでも無い事には違いない…

レベッカの提案に、“王”は満足げに頷く。

「うむ、よろしい…おやすみ!」

そして彼の瞳から発した赤い光がパーティー全員に降り注いだ。
そして、皆、気を失った―




……………


………












天使の夢が見える…
ゆれ動く炎のただ中に
人影が見える…

こちらをおどすように
にらみつけている…
その瞳には凶暴な光が宿っている…
強力な呪文を呼び覚ましている…
こちらを破滅に追いやる呪文を…
何かをささやいている…
その声がかすかに聞こえる…
名前のように聞こえる…

ゾォォォフィィタァァスゥゥ…

と、光景が一変する…

部屋には何もない。
しかし壁のすみに、
小さな裂け目がある…

口の中に何やら奇妙な
味がする…

と、部屋の光景が変わり始める。

それは次第に大きく
なり始め…

気がつくと部屋に飲み込まれて
しまっている…

もう、空も見えない…

小さな裂け目は、まるで
トンネルのようになってしまう!

トンネルを走り抜ける…







気がつくとそこは、
小さなうす汚い部屋で、
あたりにはかびと汚物の臭いが
充満していた…。


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