フリードルムの手の中にある十字架は、静謐で清らかな輝きを放っていた。
亡霊から手渡された品ではあるが、聖なる力を秘めているのは傍目からも分かる。
それだけに、王妃の話は真実みを帯びていた。
あの城で何が起こったかの証人の一人なのだから―
「陛下。いかがなさいますか?」
「そもそも、我々の目的はあの王の討伐ではなく、あくまでもこの
城からの脱出だ。あんな王妃の頼みなど聞かぬわ」
そう言うと、フリードルムは十字架をその場に置いた。
王妃の話を信じない。
これが、ラーナパーティーの決定だった。
「あの女…嘘を付いて居るしな」
「やはり…気付いて居られましたか」
「うむ。悪魔の娘の母親は、あのゾーフィタスの所業により、命を落とし、生きた屍となって虚ろの状態で生かされておったのだ。牧師の亡霊も然りだ。それに両人が閉じこめられていた塔の鍵…あれは、ゾーフィタスの部屋から出てきた…」
「つまり、ゾーフィタスは王妃の愛人の一人…」
「そういう事になるであろうな。もっとも、SMグッズを持っていたり、ヘビを愛玩するような女だ。余計信じられぬわ」
王妃の部屋からさらに奥に伸びている回廊。
その果てに、小さな部屋があった。
王妃の話が本当ならば、そこが悪魔の娘―レベッカの部屋であろう。
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