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久々に、プラウエンの帝城に皇帝が戻った。
その日から、城内は騒然となった。
否、皇帝の帰還についてではない―
「何この臭い…」
城内に馬の臭いが充満していたのだ。
戦線から戻ってきたばかりのルートヴィヒ・ペドロ兄弟も思わず顔を顰める。
「兄さん、城の中にも馬小屋が出来たんだろうか…」
まさにペドロの言葉通りだった。
城内にも馬小屋が三つ四つあったとしても、これほど酷い臭いではない。
臭いは玉座の間、そして執務室のあたりに来ると一層悪化した。
使用人達でさえ、ハンカチに香水を垂らしておかなければ耐えられない程―
「ラスロー…無理をせずともよい。素直にハンカチを鼻に当ててもよいぞ」
「は…ではお言葉に甘えまして…」
執務室では、ついに宰相ラスローは耐えられずに鼻を押さえた。
リルガミンの宿屋は、馬小屋だけは無料で開放されているために冒険者の多くは簡易寝台よりも馬小屋を選んだ。
恐ろしい事に、ここの宿屋は一度客を部屋に入れると一週間は部屋から出してくれないのだ。
中には、この部屋を利用したばかりに年を取って老衰してしまった者もいる。
その情報を知っていた“帝国パーティー“は最初から馬小屋を利用していた。
無論、抵抗が無かったわけではない。
それでも「加齢」という問題を考えて、皇族や爵位やそういったプライドをかなぐり捨てて彼等は馬小屋の藁にくるまって休んだ。
すっかりそれが定着してしまった頃には、身体に馬小屋の馬や藁の臭いまでがこびり付いてしまったのだ。
ラスローは一応、アイテムの鑑定や識別のために冒険者登録していたが、普段はほとんど自国で待機していたためにそれを免れた。
なお、馬臭くなったのはプラウエン城だけではない。
「お兄様、あまり寄らないでください」
「眠気覚ましになっていいだろう、シャルロットよ」
オルトドクス城も同様だった。
だが、馬や藁からなるべく離れ、かつ香水を活用していたフランソワはいつもの通り芳香を漂わせていたとか―
***
ウィザードリィープレイヤーの多くは、恐らく馬小屋以外に利用してないと思われます(笑)
ギルガメッシュの酒場―
リルガミンに住む者、いや、冒険者ならば有名な場所である。
冒険者達が集い、別れ、あるいはこれから向かう危険な【狂王の試練場】という迷宮への準備をする酒場だった。
そうした事もあって、地元民は決して近づかない危険な場所である。
下手に近づけば、柄の悪い冒険者たちに絡まれ、身ぐるみを剥がれる事など珍しくない。
近くの路地裏にうち捨てられた死体を警備兵が‘片づける’光景も当たり前である。
そんな酒場の片隅に、ラーナパーティーはいた。
「いよいよ陛下が今日お戻りになられる…」
事の発端は、地下10階の戦闘だった。
玄室に飛び込んだ時、モンスターが出なかったのだ。その一瞬の油断を―まさに玄室に潜んでいたヴァンパイア達は狙っていたのだ。
それは本当に誰もが予想していなかった事態だった。
ヴァンパイアの不意打ちを受け、皇帝が倒れ―
急所を攻撃された訳ではないので死亡は免れた。
だが、麻痺と2レベルダウンは大きな痛手だった。
幸い、レベルは下がったものの元から能力が高めであった皇帝はこれを機に戦士から君主(Lord)になることを決意したのだった。
リルガミンの城下町に戻った後、訓練所へと皇帝は単身向かった。
一日もあれば転職は完了する。
ギルガメッシュの酒場にて待ち合わせていた彼等は今か今かと待ち望んでいた。
「待たせたな」
その声に振り返ると…
「陛下!!」
確かに君主(Lord)となったのは一瞬で分かった。
だが…
「お父様…以前より頬がそげられませんか?」
「気のせいだ」
「その…お痩せになられた様ですが…」
「それも気のせいだ…それよりも、今からマーフィー部屋にいく。オズワルド、ミカエル…供をしろ」
そう言うと、前衛3人は酒場を後にする。
「ビスルクアス。貴方、一度訓練所で転職した経験がありますよね?一体、あそこでは何が行われているんです?」
「それは答えかねます。申し訳ございません」
「何故です?」
「転職経験者は、決して訓練の内容を口外してはならないと言われておりますので答えられませぬ」
その言葉にマルガレーテは戦慄した。
一体訓練所で、父の身に何が起こったのだろう。
頬がそげていたばかりではない。どことなく、ぐったりと疲れ果てていたのだ。
常に覇気と威厳に満ちていた父のあんな姿をマルガレーテは見たことが無い。
転職―職を変えるはいいが、ほとんどの者は能力が最低限にまで落ちている。
肉体的に衰え、知恵を失い、神を信じる思いまでがつぼみ、さらには運に見放される―
否、それ以前に訓練所で何人かは登録した後身ぐるみを剥がれた挙げ句、登録を抹消され、事件自体が隠蔽されているのだ。
あそこで何が起きているのか―それを想像するだけでマルガレーテは震えが止まらなかった。
数日後にマーフィーズゴースト狩りから戻り、いつもの父を見るまでは―
※これらの出来事は、実際私のプレイ中起こった出来事です。
初めて地下9階に降り立ったグランクールパーティーは到着早々モンスター達の不意打ちを受けた。
愚鈍な亜人種トロール達を率いるオークロードは狡猾で、パーティーは連携が取れないまでに切り離されてしまったのだ。
さらには、屈強な戦士のウェインや侍のフランソワではなく、非力な司教クローヴィスや盗賊のスザンナを集中的に狙ってきたのである。
「キャーッ!!」
トロールの棍棒の薙ぎ払いをスザンナは避けきれず、直撃を受けた。
食人鬼どもに取っては、か細い少女の身体を壁まで吹っ飛ばす位、朝飯前だ。
「しっかり!!しっかりして!!スザンナッ」
必死に回復魔法―DIALをかけても、力無いその肢体が意味するのは誰がみても明らかだった。
「やだ!!やだよ!!スザンナーッ!!」
悲鳴に似た泣き声を挙げるカールにオークロードの凶刃が迫る。
高潔かつ優秀な戦士である君主(ロード)であるとはいえ、まだレベルの低いカールがその凶刃を剣、もしくは盾で受け止める力は無い。
「ミームアリフ ヘーア ラーイ ターザンメ
(火よ、風よ、高遠に吹き荒れよ!)MAHALITO!」
クローヴィスの手の先から炎が蛇行しながらオークロードを包み込む!
熟練(僧侶、魔法使い両方の魔法が使える)の司教クローヴィスともなれば、一撃でオークロード達を全滅させる事ぐらい造作もなかった。
「クローヴィス!!スザンナがっ…!スザンナが…!」
しゃくり上げながら、カールがスザンナにすがりつく。
聖騎士とも言われる君主(ロード)になったにもかかわらず、大事な友人を助けられなかった悲しみと悔しさで少年は目を真っ赤にして涙を流していた。
「ご心配には及びませぬ、陛下」
そう言うと、クローヴィスはスザンナの身体に手を当てる。
「ダールイ…(生命よ、再び動き出せ)―DI」
生命を呼び戻す魔法はやはり精神に負担がかかるのだろう―
詠唱が終わった時には、クローヴィスは肩で息をし、額は汗でびっしょりと濡れていた。
呪文が発動されると同時に、一瞬スザンナの身体が光り、可憐な頬に再び赤味が差し出す。
長い睫に縁取られた瞼が開かれるのはその直後だった。
「う…ん…?あ、あら…あたし…」
「スザンナ!!良かった…良かったよーッ」
蘇生は成功したのだ。
一息ついていた時だった。
「摂政殿…ウェインも」
フランソワが動かないウェインを背負ってクローヴィスの前に現れた。
「やれやれ、頑丈だけが取り柄の様な男までもが…」
仕方なさそうではあるが、クローヴィスは再び蘇生魔法DIを詠唱しはじめる。
だが…
「おおっと」
クローヴィスの呟きに、フランソワ、カール、スザンナの顔が引きつる。
* ウェインは 灰に なった *
数分後、カント寺院前―
「このバカ摂政!!俺をどさくさに紛れて消滅させる気だったな!」
ウェインの怒号が響く。
蘇生したばかりなのに怒鳴り散らせるのは、ひとえに彼の生命力が人並み外れているからだろう。
クローヴィスが蘇生失敗した後、全員でウェインの遺骨(灰)を集めてカント寺院に行き、見事よみがえらせたのである。
「我が輩とて失敗はする。元々DIは成功する方が奇跡的だ」
「なら、何故スザンナの蘇生に成功して、俺の蘇生には失敗するんだ!!あまりにも作意過ぎるぞ!」
「何度言えば分かるのだ、我が輩の意思ではどうにもならぬ事だ!!大体、誰がお前の蘇生代を出したと思っておるのだ!」
「俺を骨(灰)にした貴様が弁償するのが当然だろう!!」
延々と口論を続けるクローヴィスをウェインを見て、カールは改めて決意を固くした。
もっと強くなろうと。
***
何故かクローヴィスがウェインに回復魔法をかけると失敗ばっかします。
まさか、ウィザードリィでも二人の不仲を反映するなんて…。
でもウェインはグランクールパーティー中大事なポジションなので、私はとっても大事にしてます。
(全員大事にしてますが!)