自分たちはその後、貧弱すぎるステータスになってしまった兄をかばいながら、何とか切り抜けるのに成功した。
何と言っても、自分たちの体力が20越え出来たのに対し、まだ兄は11しか無い。
ネズミに3回噛まれただけでアウトだ―
ああ、兄上…
百人斬の斧の異名が…
常に兄は物陰に隠れる様になり、自分とフランソワがネズミや襲ってくるつるくさをベシベシと追い払う役割となった。
さて、探索の手も何とか二階に及んだ。
二階の、一番頑丈そうな扉を開けると、そこは王の寝室だった。
いくつもの小部屋に通じる扉があったので、その1つを開ける事になった。
悲しいかな、戦闘では影に隠れてばかりの兄がこの時頼もしかった。
ものの数秒で開けてしまったのだ―
正確にいうなら、こじあけたのだ。
見ているこちらとしては、
ただ単にドアノブと錠前を破壊した様にしか見えなかったが、とりあえずドアの開け閉めに支障は来していないのだから成功だ。
「戦闘じゃこそこそ隠れ、鍵開けが得意―まるで
こそ泥みたいですね」
言わなければ良いことを!!
(本人にしてみればちょっとした軽い冗談のつもりだろうが)その一言で、兄弟喧嘩が勃発してしまった。
殴り合いになると永遠に決着が付かない。
「この野郎!!今日こそぶっ殺す!」
「すまない、兄さん。ついぽろりと」
…何故こうなんだ、私の兄と弟は…
止めるのもばからしくなり、ほぼ10に満たない少年たちの殴り合いになったのを後目に自分はその部屋に入ってみた。
どうやらそこは書庫であり書斎であった。
この部屋の壁際には、朽ち果てた本棚と崩壊した本の残骸が積み重なっていた。
向かい側の壁際には机が崩れ落ちている。
殆どの本は形を成さないほど崩れていて、中を読むことは出来なかった。
それでもいくつかの本はタイトルを読むことが出来た。
「世界の歴史」
「数学全書」
「2週間で7キロ痩せてその体型を保つ方法」
「呪文について」
最後の二冊は何かの役に立ちそうだった。
しかし残念なことに両方ともかなり腐敗が進んでいるようだ。
まだ読める場所から手に入った情報と言えば、キャベツの面白い調理法だけだった。
生還して姉上に会えたら教えようと思い、とりあえずメモをしておいた。(注:メモは別に取ってある様子)
更に面白い物はないかと机の残骸を探ってみると、机から壁の中に繋がっているワイヤーが見つかった。
罠が仕掛けられている可能性を考慮し、体を屈めてワイヤーを引いた。
すると、石壁の一部が抜けて戸棚が見つかり、宝石箱が隠されていた。
宝石箱を開けてみると、中には金色の鍵が一つと小さな本が入っていた。
本の状態は悪くなかった。
それはノートか日記のようだったが、判読できない不思議な暗号で書かれていた。
恐らく、この国のごく一部の上流階級が使う文字なのだろう。
周囲を捜索したあと、これ以上この部屋で探索の必要はないと考え、王の私室へと戻った。
戻った所で、まだ兄と弟は殴り合っていた。
喧嘩も出来なくなったらその時兄も弟も絶望に浸りきってしまった状態であるという事になる。
まだお互い罵り合い、殴り合っている内はいいのかも知れない。
そう思い、しかしこのまま続行させても不毛なだけなので、
自分はとりあえず止めに入る事にした。
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