オズワルドの手記―
あの気味の悪いゾンビがいた塔から陛下と私はすぐに離れ、一旦地下に戻る事にした。
まだ探索しきっていない部屋を片っ端から見ていった。
途中、まるまると太ったネズミに襲われる、穴に落ちて巨大な蛇に襲われるといった危険を何とか乗り越えていった。
この城の障気は、通常の生物をこんなに巨大化させるものだろうか。
しかしそれでも初期の頃よりも戦闘は遙かに楽になった。
それというのも、私と陛下は次々に新しい職業(class)を試して地道にレベルアップに励んだからだ。
どういうわけだか、ここでは職業(class)を変えても大して被害(加齢する事)がないのでガンガン変えた方がいい事に気付いたのだ。
すぐにレベルアップするので、魔術(魔法攻撃だ、言うまでもなく)や神学(回復魔法関連を覚えるのに必要なスキルなのだ)といったスキルを身に付けていった結果、何とか我々も城に巣くう魔物たちと対等に渡り合えるようになったのだ。
気付けば、陛下は「かくれる」の名人になられた。
ほぼ100%でかくれる事に成功なさるのだ。
…私の方はおかげで、魔物の総攻撃を受けるのだが…
しかし!!
陛下のためならこの身なぞ惜しくはない!
むしろ陛下のために死ねるなら、本望ッ!!!
…話がそれてしまった。
ともかく、命中率の異常な悪さを「かくれる→魔法連射」でなんとかカバー出来るようになった我等は探索することが楽になったのだ。
話を戻そう。
その塔の根本に当たる、部屋がまだ手つかずだったので入る事にした。
部屋を覗いてみると、向こう側に朽ちた机が崩れ落ちている。
明らかに真ん中辺りが叩き割られ、
その周りには、かなりボロボロになった書類が散らばっている。
どうもそれは何か法的な文書のようで、
罪状と処刑命令が書き記されていた。
調べてみると机の下の小仕切りの中に、鍵が一つ隠れていた。
恐らく「牢屋の鍵」なのだろう。
さっそく近くにあった、監獄の扉を開く。
「うッ…」
凄まじい死臭が鼻をついた。
牢屋の独房1つ1つに骨が積み重なっている。
山のように積み重なっているのは、忘れ去られた囚人の骨だった。
それも鎖に繋がれたまま死んだらしい。
一番奥の独房の壁には人間の骨の残骸らしきものが、地下牢の壁にもたれかかっていた。
最期の時以来、それに触れたものは居ないようだった。
骨の間を探ってみると、石が緩んで床から突き出しているところが見つかった。
その石を外して下を覗き込むと、
そこには奇妙な文字で書き記された小さな航海日誌のようなものが入っていた。
殆どのページは汚れすぎていて読めなかったが、
文字さえ解読できれば最後の一部だけ読めそうだった。
恐らく、海賊の日誌ではないかと陛下は指摘なさった。
もしや、クィークェグが言っていた海賊船長の宝の隠し場所はここに書いてあるのではないか。
これさえ読めれば…
とりあえず何か手がかりはないものか、と我々は二階に上がった―
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