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わたしは自分がなにを感じ―なにを考え-ているかを書いてみたいと思う(キケロ)
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うまくいくかテスティング
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オズワルドの手記―

あの気味の悪いゾンビがいた塔から陛下と私はすぐに離れ、一旦地下に戻る事にした。
まだ探索しきっていない部屋を片っ端から見ていった。
途中、まるまると太ったネズミに襲われる、穴に落ちて巨大な蛇に襲われるといった危険を何とか乗り越えていった。

この城の障気は、通常の生物をこんなに巨大化させるものだろうか。

しかしそれでも初期の頃よりも戦闘は遙かに楽になった。

それというのも、私と陛下は次々に新しい職業(class)を試して地道にレベルアップに励んだからだ。
どういうわけだか、ここでは職業(class)を変えても大して被害(加齢する事)がないのでガンガン変えた方がいい事に気付いたのだ。
すぐにレベルアップするので、魔術(魔法攻撃だ、言うまでもなく)や神学(回復魔法関連を覚えるのに必要なスキルなのだ)といったスキルを身に付けていった結果、何とか我々も城に巣くう魔物たちと対等に渡り合えるようになったのだ。

気付けば、陛下は「かくれる」の名人になられた。
ほぼ100%でかくれる事に成功なさるのだ。
…私の方はおかげで、魔物の総攻撃を受けるのだが…

しかし!!
陛下のためならこの身なぞ惜しくはない!
むしろ陛下のために死ねるなら、本望ッ!!!


…話がそれてしまった。

ともかく、命中率の異常な悪さを「かくれる→魔法連射」でなんとかカバー出来るようになった我等は探索することが楽になったのだ。

話を戻そう。

その塔の根本に当たる、部屋がまだ手つかずだったので入る事にした。
部屋を覗いてみると、向こう側に朽ちた机が崩れ落ちている。
明らかに真ん中辺りが叩き割られ、
その周りには、かなりボロボロになった書類が散らばっている。

どうもそれは何か法的な文書のようで、
罪状と処刑命令が書き記されていた。
調べてみると机の下の小仕切りの中に、鍵が一つ隠れていた。

恐らく「牢屋の鍵」なのだろう。

さっそく近くにあった、監獄の扉を開く。



「うッ…」


凄まじい死臭が鼻をついた。

牢屋の独房1つ1つに骨が積み重なっている。
山のように積み重なっているのは、忘れ去られた囚人の骨だった。
それも鎖に繋がれたまま死んだらしい。

一番奥の独房の壁には人間の骨の残骸らしきものが、地下牢の壁にもたれかかっていた。
最期の時以来、それに触れたものは居ないようだった。
骨の間を探ってみると、石が緩んで床から突き出しているところが見つかった。
その石を外して下を覗き込むと、
そこには奇妙な文字で書き記された小さな航海日誌のようなものが入っていた。
殆どのページは汚れすぎていて読めなかったが、
文字さえ解読できれば最後の一部だけ読めそうだった。


恐らく、海賊の日誌ではないかと陛下は指摘なさった。
もしや、クィークェグが言っていた海賊船長の宝の隠し場所はここに書いてあるのではないか。

これさえ読めれば…


とりあえず何か手がかりはないものか、と我々は二階に上がった―


バトンです。久々っ。

☆ホームページバトン

■サイト名を教えて下さい
夜光珠(いつか着けようと思っている英語版のタイトルは、Shining pearl in the darknight)

■サイト名の由来がありましたら…
最初イタリア語で「小さな庭園」を意味する「IL Giardino Antico」にしようと思ったんですが、友人から「イタリア語わかんなーい」と言われ、じゃあもっと分かり易いものを→そうだ、日本語か漢語かにしよう→暗中香か夜光珠にしよう→ちょうど悪魔城や聖闘士やるんなら夜の方が似合いそう→夜光珠に決定。
といういきさつです。
ただ、誤算はゼルドナーシルトがメインジャンルにのし上がってきてしまった事ですね。
ゼルドナー、どこに夜の要素があるんだ(涙)

■なんでHPを作ろうと思ったんですか?
悪魔城関連のチャットに参加し、コスモが最大級に燃え上がってしまった勢いです。
うっかり阿羅耶識(漢字合ってるかとっっっても不安)レベルまで開眼してしまうとこうなります(意味不明)

■運営している時に楽しい・嬉しい事は何ですか?
同好の士発見と、その方からのささやかなメッセージをいただいたり、イラストのお褒めの言葉を戴いたり、素敵なイラストを当サイトに投稿してくださったり…。
いっぱいあって分かりません。
毎日ワクワクです。

■では一番辛いことは何ですか?
別サイトさんでも見ますが…あらし…
本気で凹むから止めて欲しいです。

■サイトのメインは何ですか?
イラストです。…が、最近文章も…いいなあと。

■力を入れているコンテンツは?
イラストとサイトデザインです。

■サイト/作品のこだわりは?
全体の雰囲気をまとめる事です。
…といっても、どうやっても結局自分らしさが滲み出てしまうのがさすがといいますか…。

■BLって書きますか?
私はどちらかというと、男女CPが大好きなので…
といいつつも、BLはあちこちで読みまくってます。
己サイトでもやろうかな…と血迷った事を考えてしまいますが、やる勇気とはっちゃけさが…でない…(汗)

■夢小説は読みますか?
オリキャラの名前使ってます(もはや夢じゃない…笑)
脳内ではしょっちゅう夢小説状態なんですが(それってどうよ)

■ネタが思いつくのはいつですか?
いつでもどこでも。
どんな時もふとした瞬間、ぴこーんと閃きます。

■オンで会ってみたいのは?
悪魔城関連は、割とオンで会った方が多いです。
…が、まだ一部お会いしていない方もいますので、その…一度会ってみたいです。もじもじ。そこでキャラ萌えして盛り上がりたいな~とか思ってます。(もじもじ)

■回してきたあの人のサイト/作品
当サイトが出来たのとほぼ同期にスタートなさっている(多分)だけに、妙に親近感を覚えてます。
イラストは本当に美麗で繊細で、背景もしっかり描かれてるのがすごいなあといつも感動しちゃってます。
ヨーロッパのきらびやかさと、アジアの神秘的な雰囲気が融合した、独特の世界観が本当に大好きです。

■次に回す10人
フリーダムです。どうぞ持っていきたい方はどうぞっ。
皇帝フリードルム2世の手記―


王妃の部屋から出た時、そこに黒いスペードの鍵が落ちているのに気付いた。

そう言えば、城の四隅の他中央に2つの塔が東西に寄り添うようにあるのだが、その西側の塔に厳重なまでに封印されていた扉を思い出した。
そこには、確かスペードの印が押されていたはず―

もしや、これで開けるのでは?

オズワルドも同意らしく、早速我等はその鍵を持って、西側の塔に登ってみた。
最上階にある扉の錠に鍵を差し込むとピッタリだった。

開けるなり、吐き気を催す悪臭がした。
と同時に、人影が見えた。

明らかにそれは生きている人間ではない。
死後―恐らくもう何十年も経った、おぞましい、動く死体だった。

暗黒兵を召喚する指揮官はゾンビを従える者もいるが、そのゾンビ達全部合わせても、目の前にいるこのゾンビのおぞましさには叶うまい。
悪臭と共に、呻き声を上げながら我々に飛び掛かってくる。
動くたびに、その死体から腐った肉片がずるりと落ちる。

意外と動きは軽い。

こやつに殺される訳にはいかない―

たまたま魔物が持っていた、ディスペル・アンデッドの巻物の力を解放してみた。
不死の魔物を一撃で浄化する…はずだが…


無反応


…余の日頃の不信心っぷりが現れてしまった。
何となく落ち込む。

仕方なく、オズワルドがカットラスで何度もそのゾンビに斬りかかる。
何度も強打すると、やがてゾンビはよたよたと倒れる。
動かなくなった―つまり、二度目の死をやっと迎えた訳である。

もはや性別や年齢すら分からないそれを見つめるのは何となく、気がとがめ、持っていたマントを掛ける。

…単に腐りかけたそれを見たくない、という事もあるのだが。

塔の中のベッドやテーブル、椅子などは長い年月を経ていながら殆ど元の状態のままだった。
ベッドの上には、古い毛と腐った肉片が残っていた。
恐らく先ほど倒した死体のものだろう。

そう思うと、何だか気味が悪い。
このゾンビはずっとここで暮らしていたのだろう。
何のためにだろうか…。
一体いつからこやつはこんな所で暮らしていたのだろうか。

だが、そんな事よりも早くここから出る方法を探さなくては。

そう思い、余とオズワルドは塔を降りる事にした。


反対側も探索しようと思ったのだが、そこには頑丈な鉄格子が降りていた。
何かの泣き声の様な声も聞こえたが、恐らく塔に吹き込む風の音だろう。
余の城でもよくある事だ。

臆病者の新米が、それを亡霊の声と勘違いして大騒ぎを起こす事も多い。

何と言っても、余の城―プラウエン城も古い城だ。
そして何度も謀略で多くの血が流されている。
亡霊出現の噂が1つや2つあっても(作られても)不思議ではないのだろう。

004


ひとしきり兄貴と派手に大喧嘩した後、王妃の部屋(王妃でなくとも、恐らく高貴な女性のものであろう)近くからとんでもない物を発見してしまった。

…その、いわゆる

SMの遊具を発見してしまったのだ。

仕舞い方が恐ろしく乱雑であり、また罠が既に解除されている事から先行隊(ラーナ)の仕業である事は予想に難しくない。
…恐らく処分に困ったのだろう。

とりあえず、ブラは防御力が高かった事から姉さんが着けている。
…ロイトガルト姉さんの方が様になると呟いたのを目ざとく(いや、耳ざとく)聞きつけた兄貴とまた大喧嘩になった。

何故仲良くできないんだろう(悶々)

それはともかく、二階の探索を終えた私たちは特に何の収穫も無く(といっても姉さんが珍しいキャベツの料理方法の本と日記を持ってくれた)、再び地下へ戻る事にした。


気付けば、私たちの探索の目的はスヌープチェリ探索となっていた。
…城の外で抜け出す方法を探すという事をすっかり忘れかけていた。

地下に戻って、ある一室を空けるとそこには落書きがされていた。

「オークの馬鹿騒ぎ 金曜 夜8時」

「一人で寂しい夜は…1-900-LADY」

$$ 探しています $$
『迷子のスヌープチェリ』
見つけた方には謝礼
ル・モンテスまでご連絡を

謝礼と聞いて、兄さんの目がキラリと光った様な気がする。
あの様子では、謝礼をうまうまとせしめる魂胆なんだろう。


そんな落書き群でも、「TREBOR SUX」と書かれた壁の辺りに小さな穴が開いている。
多分小鼠の仕業だろう。


「そうだ、これでもやってみるか」

兄さんが取り出したのは、この部屋に来る前に拾った、腐りかけのチーズだ。
この城に来てからというもの、私たちが食べた物は、ならず者たちが携帯していたカブだけ。
カブと城の湧き水で何とかやっているが、栄養失調に陥ってしまうのは目に見えていた。
そんな時、兄さんは城の食料庫(だったであろう部屋)から腐りかけのチーズを見つけたのだ。

その部屋にあった、貯め置かれた幾つもの樽は腐って割れており、包装された何かが中から床に零れ落ちていた。
中身の殆どが固くなっていたが、部屋の湿気のおかげでいくつかがまだ柔らかいままだった。
…とはいえ、かなり古くなっているので、とても食べられるような代物では無かったので、さすがの兄さんも諦めたのだ。

多分姉さんや私が止めなかったら、「もうカブばかりなんざ懲り懲りだ!喰ってやる!」と食べて、腹痛を起こしていたに違いない…。


「ほれほれ、チーズだぞ~」


それは本の軽い気持ちだったのだろう…。

私も姉さんも「そんな事でネズミが出るわけが無いだろう」と笑っていたのだが…


向こう側でなにやら物音がした。
チリチリ言う音は次第に大きくなり、壁の向こう側が揺れているのが感じられるほどになった。

兄さんも危険を感じたのか、チーズを置いたまま後ずさりする。
逃げる準備ではないのは明白だ。
ならず者どもから奪ったカットラスを握りしめている。

私も姉さんも弓に矢をつがえる(何せ、私も姉さんも最初のクラスがレンジャーだったものだから、武器が弓矢に強制的になっているのだ)。


緊張がピークに達そうとした、その瞬間




どごおおおッ!!


突然、凶暴に荒れ狂った巨大なネズミによって、壁は勢いよく吹き飛ばされた。

「何て連中だ―」

今までネズミに何度も喰い殺されかけた(実際はこのプレイヤーが兄さんがネズミにHP0にされる度にリセットしまくっていた)兄さんの額に冷や汗が流れる。

茶色の毛並みのファットラット―猫よりも大きなネズミに率いられているのは、明らかに狂犬病に冒された数匹の赤い毛並みをしたネズミと、歯が異様に鋭い黒灰色のネズミたちだ。

数が多すぎる―

兄さんだけでなく、姉さんも私も生命の危機を感じた―

飛び掛かってくるネズミたちを何とか避けながらも、射殺そうと試みるが、当然の事ながら全部避けられる。
姉さんも同様だ―

兄さんに至っては、一番命中率が高いはずであろうカットラスを振り回すが、全然当たらない。
ネズミたちが俊敏すぎるのだ。

最強騎士の兄妹、ネズミに喰い殺される―
そんな最期、イヤだ…


「兄上!フランソワ!伏せろッ!」

姉さんの声に従った時だった。


突然爆音が響き、烈しい熱風が吹き付けた。
網膜と鼓膜がどうかしてしまったのか、とも思ったが思い出した。

確か姉さんは、何か困った時のために、ル・モンテスから『花火』を買っておいたのだ。

まさか花火がここでこんな形で役に立つとは―




その後は、私たちの優勢となった。
兄さんのカットラスが、花火のダメージから立ち直れていない、ファットラットの胴を真っ二つに切り捨て、後のネズミたちも私と姉さんの矢で一層された。

花火の音と光がネズミたちの動揺を誘えたからこそ、の成果だろう。


「危なかったな…しかし…この奥はどうなっているのだろう」



ネズミたちがいたその場所は、人工的に掘られた穴になっていた。
そこに―宝箱があった。

こういう場合、大抵罠が仕掛けられているのだ。

「テレジア…お前が開けろ」

「断る。自分がこういう事に向いていないのは知っているだろう?」

「じゃあフランソワ、貴様が開けろ」


私もイヤではあったが、(姉さんはともかく)兄さんが失敗するのは目に見えている。

恐らく、これは…「ヴォーパルダガー(開けると鋭い刃が乱舞して襲ってくる)」だろうか。

そう思って開けた途端―

「フランソワ貴様わざとかーーー!」

罠は当たっていた。
だが、外すのに失敗したらしい。

「すまない、兄さん。意外と難しいものだな」

「大体何故貴様に罠が当たらず、俺に当たるんだ」

「仕方ないじゃないか、兄さん、LUCK低いし―」



再び不毛な喧嘩が勃発。

だが、得た物は大きかった。

そこには、ル・モンテスが言っていた「鼻と耳が黒く、全身が白い」スヌープチェリ(のぬいぐるみ)があったのだから。



「これ、どう見てもスヌー●…」

「姉さん、それを言わない…」





自分たちはその後、貧弱すぎるステータスになってしまった兄をかばいながら、何とか切り抜けるのに成功した。

何と言っても、自分たちの体力が20越え出来たのに対し、まだ兄は11しか無い。
ネズミに3回噛まれただけでアウトだ―

ああ、兄上…
百人斬の斧の異名が…


常に兄は物陰に隠れる様になり、自分とフランソワがネズミや襲ってくるつるくさをベシベシと追い払う役割となった。


さて、探索の手も何とか二階に及んだ。
二階の、一番頑丈そうな扉を開けると、そこは王の寝室だった。
いくつもの小部屋に通じる扉があったので、その1つを開ける事になった。

悲しいかな、戦闘では影に隠れてばかりの兄がこの時頼もしかった。
ものの数秒で開けてしまったのだ―

正確にいうなら、こじあけたのだ。

見ているこちらとしては、ただ単にドアノブと錠前を破壊した様にしか見えなかったが、とりあえずドアの開け閉めに支障は来していないのだから成功だ。


「戦闘じゃこそこそ隠れ、鍵開けが得意―まるでこそ泥みたいですね」


言わなければ良いことを!!

(本人にしてみればちょっとした軽い冗談のつもりだろうが)その一言で、兄弟喧嘩が勃発してしまった。
殴り合いになると永遠に決着が付かない。

「この野郎!!今日こそぶっ殺す!」

「すまない、兄さん。ついぽろりと」

…何故こうなんだ、私の兄と弟は…

止めるのもばからしくなり、ほぼ10に満たない少年たちの殴り合いになったのを後目に自分はその部屋に入ってみた。

どうやらそこは書庫であり書斎であった。
この部屋の壁際には、朽ち果てた本棚と崩壊した本の残骸が積み重なっていた。
向かい側の壁際には机が崩れ落ちている。
殆どの本は形を成さないほど崩れていて、中を読むことは出来なかった。
それでもいくつかの本はタイトルを読むことが出来た。

「世界の歴史」
「数学全書」
「2週間で7キロ痩せてその体型を保つ方法」
「呪文について」

最後の二冊は何かの役に立ちそうだった。
しかし残念なことに両方ともかなり腐敗が進んでいるようだ。
まだ読める場所から手に入った情報と言えば、キャベツの面白い調理法だけだった。

生還して姉上に会えたら教えようと思い、とりあえずメモをしておいた。(注:メモは別に取ってある様子)

更に面白い物はないかと机の残骸を探ってみると、机から壁の中に繋がっているワイヤーが見つかった。
罠が仕掛けられている可能性を考慮し、体を屈めてワイヤーを引いた。
すると、石壁の一部が抜けて戸棚が見つかり、宝石箱が隠されていた。
宝石箱を開けてみると、中には金色の鍵が一つと小さな本が入っていた。
本の状態は悪くなかった。

それはノートか日記のようだったが、判読できない不思議な暗号で書かれていた。
恐らく、この国のごく一部の上流階級が使う文字なのだろう。


周囲を捜索したあと、これ以上この部屋で探索の必要はないと考え、王の私室へと戻った。


戻った所で、まだ兄と弟は殴り合っていた。

喧嘩も出来なくなったらその時兄も弟も絶望に浸りきってしまった状態であるという事になる。

まだお互い罵り合い、殴り合っている内はいいのかも知れない。

そう思い、しかしこのまま続行させても不毛なだけなので、
自分はとりあえず止めに入る事にした。


―オズワルドの手記―

さて数日ぶりにこの手記を書く。
何と言っても、あれ以来襲撃が激しくなり、一々記す暇が無かったのだ。


ル・モンテスとクィークェグの要求する物(正確にはスヌープチェリと宝の隠し場所の情報)を見つけない限り何にもならない。

そのため、陛下と私は危険を覚悟で城内の部屋を1つずつ開けて行くことにした。

120年前の滅亡(とはいうものの、滅亡とは言い難い何かがあった)以来開くことの無かった部屋はことごとくクモの巣と大量の埃で覆われていた。

それにしても陛下にあんな特技があったとは…。


やはり滅亡したとはいえ、きちんと城の部屋は鍵がかかってあった。
一々鍵を見つけなければならないかと思った時、陛下が何やらごそごそと扉に細工をなさっているのだ。

王族は大抵鍵作りを幼い頃教わる、とどこかで聞いた事がある。
しかし、まさか陛下が鍵外しの名人であらせられるとは…。

「うむ、これで入れるぞ」

物凄く楽しそうでいらっしゃった…
高じて無事帝国に戻った後、片っ端から鍵外しに取りかかりなさったらどうしようと一瞬思ってしまった…。

ともかく、陛下の特技のおかげであちこち入れるようになった。

かつての玉座の間や大会議場などにも入ることが出来た。
そこはもはや過去の栄華の断片すら見かけられないほど朽ち果ていた。

かつては権力の甘美な香りに包まれて居た偉大なる玉座も今や部屋の上座で、果てしない時の流れに責め苛まれている。
まるで、自らの最後の言葉によって衰えることを命じられたかのように。
もしこの崩れ落ちた部屋の色あせた玉座に下された、何らかの裁きが残っているならば、それは既に形を為さないほど崩れた高座の崩壊の山の中からかき集めなければならないだろう。
そして、それは汚らわしく悪臭を放ち、もはや何の意味も無く涙ながらに奪い去られた栄光を語るに違いない。

ふと、陛下や帝国の事にも思いを馳せてしまった。
400年という(私の祖国より短いとはいえ)長き歴史を持つ帝国も、いずれは衰微していってしまうのだろうか―
だが、それは遠い未来の話であろう、と私は思う。
今の我が軍の勢いたるや…と思いかけて、今自分がこの荒れ果てた忌まわしい城にいる事を想いだした。

閑話休題。


その中でも立派な私室を二階にて発見した。
その部屋の壁は、天使や薔薇や蔓草を彫った雪花石膏で飾られ、歳月を経て石膏はどす黒くなっていたが、その見事な細工は真に印象的だった。
大の男三人が横になってもまだ余裕がありそうな、大きなベッドの残骸が床に崩れ落ちており、元は家具だった朽ちた木材が部屋中に散らばっていた。
その優美な雰囲気といい、落ちていた破片(恐らく家具に施された彫刻の一部だろう)からして、恐らくこの部屋は妃の寝室だろう。
が、彼女が若い男達との奇妙な儀式を行っていた、という噂が本当かどうかはわからなかった。
私もあまり詳しくないが、アラム最後の王妃は王に劣らぬ程邪悪だったと聞く。

恐らく降霊術やら、黒魔術やら…そういう儀式なのだろう。

そう私も陛下も思っていた。


妃の部屋の奥のドアを開いた。
明るく彩られた壁は、昔はこの小さな寝室を際立たせていたことだろう。
さすがに当時の艶は消えうせていたが、それでも明るく陽気な様子は残っていた。

そこで小部屋にあったトランクを開けてみた…


その途端私と陛下は絶句した。


中に入っていたのは、ちょっと吃驚する様な……
一種の鎧というかなんというか…
…そんな代物だった。

それは黒い皮製で、尖った金属の飾り鋲で縁取られたごつい作りのブラだった。
その使い道ははっきりしないが、もし相応しい人物が着用されたなら、(えへんッ 注:筆記してる最中むせた模様)
”ある種の魅力”を醸しだす可能性があるようだった。


さらに困ったコトに…


「一体ここの妃は何をしておったのだ…」

陛下が取り出した物―

その奇妙なブラの下から出てきたのは、黒くて長い―鞭だった。


「…全部戻して置くぞ」


何となく見てはならぬ物を見てしまった。

塔にて、腐乱しきった気味の悪い、
得体の知れない死骸を見たとき以上の衝撃だった…。
(その死体は私の手によって、塔の外に投げ捨てておいた)



拍手、メッセージありがとうございます。
とても励みになります。

やっと三連休なので何かアップしたいな~と思ってます。
(むしろ更新すべきと思ってます)

皇帝フリードルムの手記

あれから数時間―
ネズミ退治後の疲れも癒えた我等は地下の方を再び探索していた。
どうやら地下は、牢屋と兵士達の宿舎、2つのエリアに別れているようだった。

とりあえず、片っ端から部屋を調べてみる。

手近な扉を開けてみると何て事はなかった。
部屋にあるものと言えば、部屋中に散らばっている簡易寝台の破片だけだった。


…ちょっと待った!

誰かが居る!!

暗がりから現れたのは、物静かで神秘的な暗い感じの男だった。
どこか商人を思わせるその男は開口一番、
「掘り出し物に興味はないかね?」

この魔物と障気が渦巻く世界で商売とは…。何と呑気な…。
そう思いつつ、やっと会えた人間に余もオズワルドもほっとした。

「俺はクィークェグ、どうして欲しい?」

どうして欲しい? か……そうだな、とりあえずこの城の事や周辺を探ってみるとするか。

「コズミック・フォージというのを聞いたことはあるか?」

「それは何のことだ? 聞いたこともない」

ちょっと落胆した。
仕方がないかも知れない。
見るからに商魂たくましい賤しい男だ。
知ってるわけが無い。

「何か面白い話はないか?」

「いかれたフランス野郎が塔に住んでいる! 名はル・モンテス。
船長にお気に入りを取られていかれちまったんだ!」

いかれたフランス野郎…
あの塔にいた、高圧的な男の事か…。


「あのフランス人はイカれてる。船長があいつのお気に入りを取ったんで、あいつは怒って、船長を閉じ込めた」

「お気に入りは何処に?」

「ル・モンテスのお気に入り! 確かスヌープチェリとかなんとか。
フランス人はまだ探してるぜ!」

スヌープチェリか。
その言葉を言えば、あの男は恐らく態度を変えるかも知れない。

「船長とは?」

「『船長のねぐら』のボスだ。かなりやな奴だ。いかれたフランス人が『船長のねぐら』の中に閉じ込めた」

「『船長のねぐら』とは何だ?」

「酷い評判のみすぼらしい巣窟だ。ここから遠くはないが、入るには合言葉がいるぜ」

「合言葉を知っているか?」

「合言葉は教えてやるよ。ただし情報が先だ」

「それは構わぬ。が、情報とは?」

「船長は宝をどこかに埋めちまったんだ! そいつを聞きたいのよ!宝が無ければ合言葉も無しだ! 船長は宝箱を何処に埋めた?」

「知らぬ」

「そうか…ところで、神秘の油は要らないか? 絶対に、損はさせないぞ…」



神秘の油を辞退し、我等は先程の塔へ戻った。
相変わらず扉は固く閉ざされたままだ。

「スヌープチェリとは?」

その言葉を聞いた後の、老人の声のトーンの変わり様は、一種の見物だったであろう。

「スヌープチェリを見つけたのか? 何故それを最初に言わない!! さぁ入った入った!」


背が高く、細身だが、がっしりした体格の男がそこには居た。

「わしはル・モンテスじゃ! この塔に住んでおる。最近塔は陰気になってしまった(ヤレヤレ)。…ところでスヌープチェリを見つけてくれたかね?」

「いや、残念だがまだ見つけてはおらぬ」

「あぁ、どれほど長いこと探し続けていることか!もし彼女を探し出してくれたなら、わしが船長を自由にしてやろう。ただし、スヌープチェリが先じゃ!」

「ところで…コズミック・フォージとはなんだ?」

「それはなんのことだ? 知らない。聞いたこともない」

「スヌープチェリとは何だ?」

「いとしいもの! 彼女は真っ白で大きな黒い鼻と長い耳をしておる! 船長がわしから奪い去った!」

真っ白…
大きな黒い鼻と長い耳…

それは某キャラクターの事では…?


「船長とは?」

「我等の呪われた船の船長。七つの海を渡った最も汚らわしき男!奴は城の地下に閉じ込められてる」


どうやら、クィークェグもル・モンテスも目的の物を渡さない限り情報や何かここから抜け出せるヒントもくれないのだろう。

…まったく、ここの連中は…


その間にも草やネズミ、またごろつき共が我等に襲いかかってくる。
襲撃の度に死にそうになるが、必死にブレスで切り抜ける。

この能力が開花してなければ、生き延びられなかっただろう。

オズワルドの手記

ひとまず陛下と私は一旦休憩した後、城内の探索へと戻った。
北へまっすぐ進んだところ、突き当たりに当たった。
そこには鉄格子があり、「勤務時間中 門の開放は厳禁」という看板まで着いていた。

この場合、どこか手近に扉を開けるモノがあるのだが―
と、ふと陛下が近くの出っ張ったレンガの1つを押された。
その途端埃と共に、鉄格子が開いた。

もしここで鉄格子が降りては大変ということで、陛下は廊下に残ってスイッチを見張られる事となり、私が部屋の中を探る事にした。


部屋の中央は古い骨の破片が辺りに散らばっており、地面には真っ赤なしみが付いている。
その光景は戦場で屍の山を見慣れた私であっても、どこか気味の悪さを感じる。
不自然なほどここだけ骨の破片が多い所為だろうか。

そんななか、私はふとある一つの頭蓋骨が気になった。
調べてみると、砕かれた頭蓋骨の喉の辺りから奇妙な鍵が見つかった。
今際の際に、それを飲み込んだのかもしれない。
鍵の頭には羊の彫刻が施されている。

羊―
古代から“生贄”もしくは“魂”の象徴の動物とされている。
きっとこの鍵は重要なものではないか。

これを陛下に預かっていただくこととした。


薄気味悪い部屋を後にして、南東の塔へと向かった。
南東付近についた時だった。
それほど遠くない辺りから、衣擦れなのか
何かが羽ばたくような音が聞こえてきた。
多分、この城の塔に吹き込む風の仕業だろう、と思ったがそれにしては強い風ではないのだろうか―
そう思い、私たちは塔を駆け上ってみる事にした。

目の前の階段を曲がった向こう側から、何かがぶつかったような音が聞こえる。
やはり何か近くに居る。
さらに我等は、螺旋階段を足早に登った。
前方の階段を駆け上がるガタガタという足音が聞こえる。
階段を登り、塔の最上階まで一気に駆け上がった。
塔の床にはパンの屑が散らばっていた。
そして、穏やかな風に吹き飛ばされていった。
と、突然、右のほうでドアがバタンと閉まった。
ドアの向こうから、なにやらとても奇妙な物音が聞こえてきた。
何かが強く圧迫されながら、深く呼吸するような音だった。
ドアの向こう側から奇妙な声が聞こえた。
そのイントネーションは、グランクール(読者の世界で言うならばフランスと言うらしいが)風の独特なものだった。

「どっかへ行っちまえ!」

その高圧的な物言いに黙っている我等ではない。

「貴様、この城に住んでいる者なのか!?」

陛下の問いに無礼にもその男は答える事なく怒鳴り続けている。

「わしは、『どっかへ行っちまえ』って言ってるんだ。
お前さんが誰であろうと、わしは出て行かん! 
ここから動かすことは出来んぞ!」


「何…」

どうやら相手も相当頑固らしい。

こんな石頭を相手にする位ならば、さっさと立ち去るべき、と陛下は判断なさった。

塔のバルコニーの様な部分に出てみる。
東のほうには、寒くて陰鬱で、邪悪なものたちの住処との間を隔てる沼が広がっている。
やはり、悪魔や魔女などの伝説は、ただの噂話というわけではないのだろうな、と陛下は仰有られた。

階段を降りる際、いきなりネズミの大群に襲われた。
薄汚く、一般のネズミよりも巨大で炯々と目を赤く光らせるネズミたちを見たら、どんな勇敢な男でも総毛立つだろう…。

不気味な泣き声を発しながら、奴らは私の足や陛下に飛び掛かってきた。



何とか全滅させた時、すっかり私たちは息が上がっていた。
陛下曰く「ここに居る者はどれも障気の影響を受けて、一般の世界にいるそれとは比べ者にならない位凶悪化している」
そして、ネズミ一匹倒すのに我等が苦労するのはそのせいであって、決して我等が弱くなったわけではない、とも。

確かにそうだ。

あんな巨大な体をしたネズミはラーナはおろか、グランクールにもエスタニアにもおるまい。


もしかしたら、我等もここに長居をするべきではないのだろう。
障気を吸いすぎて正気を失ってしまったら、どうなってしまうのだろう。
そんな不安が頭を過ぎったが、今はネズミとの戦いで疲労した身体に鋭気を養う事しか出来ぬだろう。

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